新型コロナ「5類」移行 診療所と病院で完結へ 県央保健所、医師会と研修 長崎
2023年4月27日 (木)配信長崎新聞
新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5月8日から「5類」に引き下げられる。これまでは入院調整などの役割を保健所が担ってきたが、今後は原則、季節性インフルエンザなどと同様に医療機関で完結する。大きな転換点を迎えるコロナ医療。関係者は「多少の混乱はあるかもしれないが、最小限にしたい」と気を引き締める。
3月下旬、長崎県大村市医師会と県県央保健所は同市で「5類は目前、どうするコロナ~地域医療を考えよう~」と題した研修会を開催。オンラインも含め約50人が参加した。
行政、外来、入院のテーマごとに専門家が講話。行政の対応について同保健所の藤田利枝所長は、入院調整や健康観察、患者の搬送などこれまで保健所が担ってきた業務を、5類移行後は原則、医療機関で行うことなどを説明した。
諫早市医師会も研修会を開き、コロナ患者を診療してきた医師らが経過観察やコロナ治療薬を使う際の注意点などを説明。基幹病院の担当者は「困ったことがあればいつでも聞いてほしい」と話した。
藤田所長は取材に「病院と診療所など医療機関の連携が重要になる」とし、「(5類移行後は)保健所は後ろでそっと見守りつつ、いざというときには支えるという立ち位置で進めたい」と話した。
■応召義務
これまでは新型コロナ感染が疑われる発熱患者は県に届け出ている診療・検査医療機関が診てきた。だが、国は5類引き下げ後は「幅広い医療機関が新型コロナ患者の診療に対応する体制に移行していく」と方針を示している。2月時点で全国約4万2千の医療機関がコロナ患者に対応しているが、今後は季節性インフルエンザと同等の6万4千に増やしたい意向だ。
医師法に定められている応召義務について、国は5類引き下げ後「新型コロナに罹患(りかん)またはその疑いのみを理由とした診療の拒否は『正当な事由』に該当しなくなる」とし、患者受け入れの適切な準備を進め、それでも診療が難しければ受け入れ可能な医療機関への紹介を求めている。
■1年かけ
国は県医師会や地域の医療機関と協議し、都道府県ごとに移行計画を策定するよう求めている。県は近く公表する予定で、外来・入院などの医療提供体制やワクチン接種、相談体制などについての方針を明らかにする見込み。
県医師会の森崎正幸会長は5類移行後について「これまでの体制は維持しつつ、1年間かけてインフルエンザを診ているレベルまで拡大したい」と述べた。入院については「軽症、中等症、重症という(医療の優先度を決める)トリアージをしっかりやり、高次の病院につなげるのが医療者の務めだ」と話した。
今後、感染対策の緩みで第9波を懸念する専門家もいる。森崎会長は「徐々に緩和することが重要。医療機関には重症化が懸念される高齢者や基礎疾患がある人、妊婦などがいる。これまで通り感染対策はしっかりやっていきたい」と述べた。