出生前診断:10年で2.4倍 35歳以上では25% 2016年7万件
2018年12月28日 (金)配信毎日新聞社
胎児の染色体異常などを調べる出生前診断の国内実施件数が、この10年間で2・4倍に急増したことが、国立成育医療研究センターなどの調査で分かった。直近の2016年は約7万件と推定され、35歳以上の高年妊婦に限れば4分の1が受けている計算になる。診断で異常が確定すると大半が中絶を選ぶため、「命の選別」につながるとの懸念も強く、慎重な実施が求められてきたが、普及が急速に進んでいる実態が浮かんだ。【千葉紀和】
国内の出生前診断は登録制度がなく、実施件数や施設数は把握されていない。研究チームは、医療機関が採取した母親の血液などを調べる解析施設への調査などから、母体血清マーカー検査▽新型出生前診断(NIPT)▽羊水検査▽絨毛(じゅうもう)検査――の総数を推計した。調査によると、06年の実施件数は約2万9300件で、全出生数に対する割合は2・7%、高年妊婦に限れば15・2%だった。これに対し、16年の実施件数は約7万件で全出生数の7・2%、高年妊婦では25・1%と大きく伸びていた。
検査別では、母親の血液中の成分から胎児の染色体異常などを調べる母体血清マーカー検査が06年の約1万7500件に対し、16年は約3万5900件と倍増した。母親の血液に含まれる胎児のDNA断片から比較的精度よく調べられるNIPTは、日本産科婦人科学会(日産婦)の指針に基づく臨床研究の形で導入された13年から増え続け、16年は共同研究組織の登録分だけで1万3628件だった。だが、海外の業者と提携してNIPTを提供するなど、近年問題化している無認可施設の実施件数は含まれておらず、実数はさらに多いとみられる。
羊水検査は06年の1万1703件から、16年は1万8600件に伸びたが、NIPT導入以降は減少傾向となっている。検査可能な施設数は羊水検査が876施設、母体血清マーカー検査が1509施設と推定した。日産婦はNIPTの実施施設拡大を視野に指針の見直しを検討している。