動物臓器の移植指針作成へ 国内実施見据え研究班 提供不足解消へ25年度目標
2023年8月18日 (金)配信共同通信社
動物の臓器を人に移植する「異種移植」の国内実施を見据え、国の医療研究を支援する日本医療研究開発機構(AMED)の研究班が、遺伝子改変した動物の臓器を移植する際の安全性を確保するため、指針案作成に乗り出したことが17日、分かった。海外でブタの腎臓や心臓を移植する手術が試みられる中、国内で適切な体制整備につなげるのが狙い。2025年度の取りまとめを目指し、国の指針につなげる。
異種移植は、免疫拒絶反応を抑えるために遺伝子改変した動物の臓器を使う。脳死や心停止による臓器提供不足を解消すると期待される一方、未知の感染症拡大のリスクが課題となっている。国内では1型糖尿病患者にブタの膵島(すいとう)細胞を移植する研究が進んでいる。厚生労働省研究班は16年、膵島細胞移植を想定し、実施に伴うリスクなどをまとめた指針を改定。だが、動物の臓器丸ごとの移植を想定した指針はなかった。
今回研究班では指定病原体のないブタの生産・飼育、臓器の摘出、医療現場への搬送、移植手術までの管理体制の標準化を目指す。具体的には、無菌環境でのブタの品質管理や臓器調達施設で飼育可能な日数、移植手術前後に実施すべき検査を検討。対象となり得る患者の整理や、異種移植に適した免疫抑制療法についても評価する。
研究班代表の鹿児島大佐原寿史(さはら・ひさし)准教授(移植免疫学)は「異種移植という新たな選択肢を、社会に正しく認知してもらえるよう取り組んでいきたい」と話している。研究班には医療用ブタや移植による免疫反応の研究者のほか、臨床医や規制管理の専門家が参加する。
異種移植を巡っては米国で22年1月、人に移植しても免疫拒絶や異常な炎症反応を起こさないように、10種類の遺伝子が改変されたブタの心臓を重症心不全の男性に移植する世界初の手術が行われた。男性は約2カ月生存。脳死者への腎臓移植も行われている。