新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けは8日に季節性インフルエンザと同じ5類となったが、倦怠(けんたい)感など特有の症状の長期化に苦しむ後遺症患者への対応は、引き続き社会の課題だ。治療に当たる医師は「国を挙げた対策に取り組んでほしい」と訴えている。
「適切な治療があれば後遺症の多くは治るのに診る医師が少なく、社会の理解も進んでいない」
聖マリアンナ医科大病院(川崎市)で後遺症患者と向き合う総合診療医の土田知也(つちだ・ともや)さん(41)は、後遺症患者を取り巻く状況をこう話す。同病院では、今も100人以上の新規の紹介患者が診察待ちで「3カ月先まで予約が埋まる」という。
2021年1月に後遺症外来を設置以降、同病院を受診した患者は今年3月までに約850人。大半が20~50代で倦怠感、頭痛、忘れっぽくなるなどの訴えが目立ち、「いろんな症状が混じり合っていることが多い」。
感染で「免疫が異常反応を起こし自律神経が乱れ、さまざまな疾患が現れるのではないか」と分析。詳細な問診や検査をすると、倦怠感や動悸(どうき)を訴える人は横になった状態から立ち上がると心拍数が急上昇する「体位性頻脈症候群」を発症しているケースが多かった。
こうした自律神経障害を伴った倦怠感の訴えには、鼻の奥を消毒する「上咽頭擦過療法」を実施。記憶力の低下、文章理解が困難になるといったブレーンフォグの症状には、磁気を使って脳を刺激する「rTMS」と呼ばれる自費治療も。適切な治療をすれば多くは治るとし「症状に合った処置が重要」と強調する。
医学的根拠の薄い治療を高額費用で受け、改善しないまま同病院を訪れる患者も後を絶たない。「全ての医師が診られるようになれば」と、神奈川県と協力し、医師向けに診断方法を解説する活動にも取り組む。
ただ、こうした後遺症治療の充実に向けた取り組みは、医師個人の努力に頼る面が大きいのが現状で、国には一層の対策強化を求めている。
休職が必要な状態なのに勤務先が許してくれず、無理して働く患者も多い。身体的な不調に加え、周囲の心ない声や先行き不安から「精神的な問題を抱える場合もある」として、社会の理解を広げる必要性も指摘した。