「12月半ばまで埋まってる」インフル予防接種に予約殺到 受け付け終了の病院も
冬を控え、インフルエンザ予防接種の予約が医療機関に集中している。新型コロナウイルスとの同時流行への懸念から、厚生労働省などは接種を呼び掛けているが、予約受け付けをいったん終了したところも。一方、マスクや手洗いなど新型コロナの予防策が定着する中で、インフルエンザの感染者数は例年より激減している。医療関係者らは「冷静な情報収集や日頃の対策を徹底して」と呼び掛けている。
「例年以上のワクチンを確保しているが、12月半ばまでの予約はすべて埋まってしまった」
「おの小児科」(兵庫県伊丹市)の上野亜子事務長はそう話す。川西市の系列病院と合わせて、昨年より500人分多い約4600人分のワクチンを確保するという。
まだ暑い盛りの8月下旬ごろから問い合わせが相次ぎ、受け付け開始と同時に予約枠がどんどん埋まっていったという。家族全員で接種に来るケースも目立つ。
神戸市灘区の内科医院でも、高齢者以外の接種が始まった10月26日時点で数週間先の予約が埋まり、翌日には受け付けをストップした。ワクチンの卸業者から入荷次第、再開する予定だが「十分に確保できるかは分からない」と気をもむ。
インフルエンザと新型コロナは発熱やだるさなどの症状が似ているため、冬場の同時流行による医療現場の逼迫(ひっぱく)が懸念されている。国は、過去5年間で最も多い約6300万人分のワクチンを確保。接種時期も例年より1カ月程度前倒しして、10月1日からは原則65歳以上の高齢者を優先し、それ以外の人は同26日以降の接種を求めた。明石市や尼崎市などは、高齢者の接種を無償化している。
兵庫県医師会は「ワクチンの確保量や入手ルートなどは医療機関ごとに違うので把握が難しい」としつつ「現時点でワクチンの総量が枯渇している状況はない。病院によっては一時的に在庫が薄いケースもあるが、今後の入荷もある。接種のタイミングをずらしたり、別の病院を利用したりしてほしい」とする。
厚労省の統計などによると、インフルエンザは12月~翌1月下旬ごろに流行のピークを迎える。昨季(2019~20年)は、今年1月に国内初の新型コロナ感染が確認され、マスク着用や消毒などが定着。流行ピークの1週間に全国の定点医療機関から寄せられた報告数は23・24人と、18~19年(57・09人)の半数以下にとどまった。
今シーズンの県内感染者数の累計は、10月18日時点でわずか2人。厚労省の担当者は「手洗いやマスク、飛沫(ひまつ)対策などはインフルエンザと新型コロナの両方に十分な効果がある。引き続き感染予防の徹底をお願いしたい」と説明する。