悦子はいつか聞いたことを、手帳にメモしている。
「自分がいるから苦悩がある、自分がいなくなれば、これほど心地よいものはない」
夫は今心地いいのだろうか、苦悩なく、心地いいのだろうか・・・・・・・
夫はこの世にいない。
『14歳 夏 中学2年生 彼女は彼女の恩師に処女を奪われた』
という過去をいつも背負って生きていた。
彼女は彼を憎むことで生きていた。
彼女が彼を憎むようになったのは、彼の心が分からなくなってからだ。
「なぜ彼は私を拒否したのか?」
という問いが彼女の心を覆いだしてからだ。
14歳、中2の春、悦子は音楽の勝部先生に誘われて合唱部に入って練習をしていた。
でも その前、1年生の時からバレー部(当時排球部とも言った)に入っていた。
だが、合唱の練習をするようになって、バレーの練習に出る日が少なくなっていた。
バレーはまだまだ3年生の活躍の時、2年生はボール拾いが主な仕事であり、秋になってから頑張れば良かった。
だから、バレー部を止めたい気持ではなかったし、音楽の先生から誘われたことが嬉しくて
歌は楽しく歌えて、生き生きしていた。
合唱部は夏のコンクールに向けて練習をする。それが終わればもう練習はないのだから、悦子にはなんの矛盾はなかった。
そんなある日、担任の山下先生に呼ばれる。
「木村先生が今日当直で、話があるから、泊まりに来てほしいって言ってるので、行きなさい。」
木村先生はバレー部の先生で、私に話があるって、どういうことだろう?
そう思いながらも、悦子はやましいところはみじんも感じていなかったので、先生に呼ばれることは一種のうれしさもあって、夕食後、るんるんと自転車を走らせて、学校へ行った。
悦子は成績優秀な子であった。入学式の時は新入生代表で挨拶もした。
でも、まったく、むじゃきな子供であった。
当直室で木村先生は待っていた。
「あー、来たか。まあ、上がれ」
小さい机に向かって悦子は座り、先生は向かいの床の間の前に座っていた。
「おまえ、合唱部に入ったそうだな」
「はい・・・・」
「なんで、バレーやめるのか?」
「いいえ」
「ほんなら、合唱部はやめろ」
「・・・・・・・・・・・・」
今日も悦子は憂鬱であり、死をイメージしている。
いや、すでに死んでいるとまで思える。雨だからかもしれない。もう三日も降っている。
山陰の女であっても、せいぜい二日である、雨の暗さに耐えられるのは。
三日目となると憂鬱となる。
この雨の中、過去を思い出している。
今日は憂鬱な人に会う仕事だ。
だから、憂鬱なのだろうか?
そればかりではない、ゆうべの夜更かしもあたっている。
ゆうべはネットのニュースを見ながらブログを書いていた。
寝不足だから憂鬱だろうか?
そんなことを思いながら、憂鬱に耐えている。
白すぎる肌の真ん中に毛むくじゃらの場所がある
鏡の前でそれを発見した時、身震いした。
その少し上には貧弱な隆起が二つ
それを確認した時、身震いした。
悦子のコンプレックスはそこから始まった。
初めはそんなに不快ではなかったが
中学2年で処女を失ってからそれらをまじまじと見て
これはなに?これはわたし?これがどうなの?
と股間に鏡を挟んで見るうちに、その存在が不快になった。
際限なく不快になって、身震いするほど不快になった。
それから、自分に嫌悪し、嫌いになり、いやだと思い、
コンプレックスへと成長していったのだ。
「自分がいるから苦悩がある、自分がいなくなれば、これほど心地よいものはない」
夫は今心地いいのだろうか、苦悩なく、心地いいのだろうか・・・・・・・
夫はこの世にいない。
『14歳 夏 中学2年生 彼女は彼女の恩師に処女を奪われた』
という過去をいつも背負って生きていた。
彼女は彼を憎むことで生きていた。
彼女が彼を憎むようになったのは、彼の心が分からなくなってからだ。
「なぜ彼は私を拒否したのか?」
という問いが彼女の心を覆いだしてからだ。
14歳、中2の春、悦子は音楽の勝部先生に誘われて合唱部に入って練習をしていた。
でも その前、1年生の時からバレー部(当時排球部とも言った)に入っていた。
だが、合唱の練習をするようになって、バレーの練習に出る日が少なくなっていた。
バレーはまだまだ3年生の活躍の時、2年生はボール拾いが主な仕事であり、秋になってから頑張れば良かった。
だから、バレー部を止めたい気持ではなかったし、音楽の先生から誘われたことが嬉しくて
歌は楽しく歌えて、生き生きしていた。
合唱部は夏のコンクールに向けて練習をする。それが終わればもう練習はないのだから、悦子にはなんの矛盾はなかった。
そんなある日、担任の山下先生に呼ばれる。
「木村先生が今日当直で、話があるから、泊まりに来てほしいって言ってるので、行きなさい。」
木村先生はバレー部の先生で、私に話があるって、どういうことだろう?
そう思いながらも、悦子はやましいところはみじんも感じていなかったので、先生に呼ばれることは一種のうれしさもあって、夕食後、るんるんと自転車を走らせて、学校へ行った。
悦子は成績優秀な子であった。入学式の時は新入生代表で挨拶もした。
でも、まったく、むじゃきな子供であった。
当直室で木村先生は待っていた。
「あー、来たか。まあ、上がれ」
小さい机に向かって悦子は座り、先生は向かいの床の間の前に座っていた。
「おまえ、合唱部に入ったそうだな」
「はい・・・・」
「なんで、バレーやめるのか?」
「いいえ」
「ほんなら、合唱部はやめろ」
「・・・・・・・・・・・・」
今日も悦子は憂鬱であり、死をイメージしている。
いや、すでに死んでいるとまで思える。雨だからかもしれない。もう三日も降っている。
山陰の女であっても、せいぜい二日である、雨の暗さに耐えられるのは。
三日目となると憂鬱となる。
この雨の中、過去を思い出している。
今日は憂鬱な人に会う仕事だ。
だから、憂鬱なのだろうか?
そればかりではない、ゆうべの夜更かしもあたっている。
ゆうべはネットのニュースを見ながらブログを書いていた。
寝不足だから憂鬱だろうか?
そんなことを思いながら、憂鬱に耐えている。
白すぎる肌の真ん中に毛むくじゃらの場所がある
鏡の前でそれを発見した時、身震いした。
その少し上には貧弱な隆起が二つ
それを確認した時、身震いした。
悦子のコンプレックスはそこから始まった。
初めはそんなに不快ではなかったが
中学2年で処女を失ってからそれらをまじまじと見て
これはなに?これはわたし?これがどうなの?
と股間に鏡を挟んで見るうちに、その存在が不快になった。
際限なく不快になって、身震いするほど不快になった。
それから、自分に嫌悪し、嫌いになり、いやだと思い、
コンプレックスへと成長していったのだ。