サンダンス映画祭プレミア上映のフィンランド映画
北欧の映画は久しぶりだ。
北欧らしい色合いも感じられるものの
あまりにもフェミニンなバラの壁紙が印象的すぎて
不穏な空気との違和感がふくらむ怖さ
庭に咲き乱れるバラのシーンも何か不可解で
温かい陽だまりのような明るい質感が
北欧らしくなく不思議な雰囲気
さらに恐ろしさが募ってゆく
自分の理想の幸せに突き進んでいく
自由奔放で強靭な母親がただただうとましい
SNSで幸せの理想の家族を発信する時の作り笑顔とのギャップ
何を求めているのだろう
仮面をかぶった家族
母を喜ばせるために理想の娘を演じるティンヤ
愛されるためには叶えなければいけないことがたくさんある
体操の演技をする華奢でしなやかな肢体
繰り返される嘔吐と過食
ただひたすらに努力する純粋で無垢なティンヤが
あまりにも切なくて
不穏さはどんどん膨らんでゆく
不穏の塊りのようにいきなり飛び込んできたカラス
ぶつかり暴れ、もがき、美しい物をこわしてゆく・・・
残酷な母のしわざで首を折られたカラスの卵は
全てをとりこんでどんどん大きくなってゆく
よくありそうな話なのだが卵からかえったグロテスクな鳥の化け物が
ティンヤの吐しゃ物を振りかけた餌をたべ成長し、
最後はティンヤの流す血を得て、入れ代わってゆくのは
実にグロテスクで気味が悪い
どうして真っ先に母を殺さなかったのか
そんなにもこんな母親に愛されたかったのだろうか
殺すよりも、娘を殺させることで
化け物が娘にとりかわってゆく不条理な最期が
汚らしく、おぞましい。
ふりまわされて自分の意志を封じ込めていくことのやっかいさを思い知った。
ティンヤの純粋で優しすぎる心が正反対の化け物を育ててしまう。
深くて醜い闇が自分の意図しないことまでやってしまう。
本当はどちらなのかわからなくなるような展開
実はあの鳥の姿は既に娘で、どこかでいれ変わってしまっていたのだろうか
私たちには二つに見えるだけで本当は同じものなのだろうか
自我や自己意識の強い北欧の女性らしくないティンヤが意外だった。
1200人の中からオーディションで選ばれたティンヤ役の演技が素晴らしかった。
美しさとウェッとなるようなシーンが繰り返され後味は悪かったけれど・・・
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