てすさび日誌

哀しき宮仕えを早期リタイアし、“サンデー毎日”のomorinが生活の一コマや雑感を認めた日誌です(2005/4/20~)

黒い雨

2008-05-23 06:32:51 | ビジネスと社会
 一昨日、NHKBS2で映画「黒い雨」の放映を観た。途中(後半)からの鑑賞であったし、原作(井伏鱒二氏)は読んでないので、詳細は憚られるが心留まりしことを3点。

 原作の舞台は広島なのだが、 映画は1989年の岡山・八塔寺ふるさと村や牛窓町でロケが行なわれ話題となった。既にカラー映画の時代にあって、あえてモノクロで撮影されており、時代考証にピッタリで臨場感あふれる作品だった。

 悲劇のヒロイン矢須子に扮した主演の田中好子さんの熱演ぶりは見直した。元アイドルグループ、キャンディーズのスーちゃんからは想像もつかない名演技だった。原爆の恐怖と悲劇を観る者に強く印象付けた日本映画の傑作の一つであると思う。

 しかし、原爆の二次被害も含めて、立続けに4人も5人もあっけなく死を迎えるシーンはどうも。それも、時代劇ばりにバッタバッタと殺されるように。最初こそは沈痛なムードだが、そのうち漫画チックにさえ感じた。そこがまたイマヘイ監督のダイナミズムというやつか。

 戦後63年を経て、原爆の話は年と共に風化しつつある。だから先の久間元防衛相発言のような物議を醸すことになる。この作品は小説の形を取っているとは言え、原爆の悲惨さを有り体に伝えている。
 映画冒頭の白い閃光の瞬間のシーンがどう表現されていたのか見落としたのは、返す返すも残念であった。

 ところで、かつての取引先になる山●新聞牛窓販売所の所長O崎さん(故人、小生の高校の大先輩)とは、仕事を離れても付合いがあった。その温厚な人柄から同業者からは「ユーさん」と呼ばれ、親しまれていた。
 往年の文学青年ユーさんは井伏鱒二氏とも親交があり、氏が取材で牛窓を訪れた際には近くの国民宿舎を定宿とし、よくユーさん宅にもお出でになった。氏のエッセイ集『すがれ追ひ』には「新聞屋のユーさん」として紹介されている。ユーさんの娘さんも井伏氏の感化を受け早大文学部を卒業、朝●新聞の出版部へ勤めておられた。「黒い雨」は、そんなことを懐かしく思い返すよすがとなった。

 地球国の中で唯一の被爆日本、今こそ平和ボケを戒め、足元を見つめ直してしっかりと歩みたい。

コメント (2)
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