噛みつき評論 ブログ版

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国外逃亡する人々と救援に現地入りする人々・・・歪曲情報の伝わり方

2011-04-21 10:08:59 | マスメディア
 福島第一原発の事故後、大勢の外国人が日本から脱出しました。また多くの国が大使館の業務を大阪などに移し、ロシアは日本への渡航を制限しました。さらに食品以外の製品まで日本からの輸入を制限する動きなど、外国の過敏な反応が目立ちました。以下はある個人ブログに載せられている記述です。

『福島第1原発2号炉で最悪の事故が起こる可能性が進行しています。外国に娘がいる友人の話では娘から「早く国外に逃げるように」との電話がかかってきているそうです。アメリカは在京米人に「家からでないように」との指示をだしたとのことです。外国の報道のほうが事実をきちんと伝えているそうです』

 情報の伝播という点で、これらの事実はたいへん興味深い現象です。やや図式的になりますが、原発情報は日本のメディアから外国メディア、そして外国人へというのが主な流れだと思われます。結果として外国人が受け取った情報は相当深刻なものであったと推定できます。政府間のルートはあまり機能しなかったようですが、これは民主党政府の信用がなかったためでしょう。

 情報が日本メディア、外国メディアと二段階で加工を受けると、これほど「変形」されるという証明になりそうです。何人かがある情報を順番に口頭で伝えていく、伝言ゲームというものがありますが、最後の人に伝わるときはとんでもなく違ったものになることはよく知られています。しかし情報伝達のプロである筈のメディアを二つ通しただけで大きく歪(ゆが)んでしまうのはなんとも奇妙です。

 日本のメディアで一回だけ加工された情報に接しても「福島県人お断り」としたホテルやレストランがありました。また茨城県つくば市は福島県から避難してくるに対して放射線汚染の有無を確認する検査証明書を要求したそうで、役所もなかなか負けていません。まあ情報を受止める側のアタマの問題もあるでしょうけれど。

 これにはメディアの体質が関係していると考えざるを得ません。例えば、新たに放射線が検出されると「〇〇ミリシーベルト検出」とバカでかく伝え、最後に小さく「直ちに健康に影響はありません」と結びます。野菜の出荷制限は大きく取り上げ、その解除はベタ記事程度の扱いです。恐怖は大きく、安心は小さく、という体質です。このような操作が日本メディア、外国メディアと2回繰り返されると、恐怖情報はより大きく、元々小さい安心情報は無視されるということになるのでしょう。

 先に紹介したブログは日本に居ながら、より伝達距離のより大きい外国メディアを見た人の反応を素直に信用するという、ちょっと特殊な方なのでしょう。しかもブログに発表することによって他人までを巻き込もうとしています。余計なことに外国の情報をフィードバックする経路を作っているわけです。むろん日本のメディアだって信用できるとは限りませんが、2回のフィルターで変形を受けたものよりはマシで、半分くらいは信用してもよいと思っています。

 遠方へと逃げた人は比較的少数であり、多くの人は現地に留まって、幸いなことにパニックには至りませんでした。

 現地に残り、あるいは遠方から現地入りして救援や復旧にあたっている人々に対して、彼らを尻目にわれ先にと逃げ出す人々、なかなか見事な対照です。人は様々ということでしょうか。まあこれは情報の受止め方以前の問題かもしれませんが。