噛みつき評論 ブログ版

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日本は急速に安全な社会へ・・・犯罪急減を知らせないメディアの事情

2008-10-23 00:48:05 | Weblog
 グラフは警察庁の犯罪統計資料の中から刑法犯総数と凶悪犯のグラフを抜き出したものです。統計資料には03~07年の犯罪の種類ごとの16のグラフが掲載されていますが、他のすべての犯罪の認知件数が減少していることが読み取れます。

 減少率はほぼ3割と読み取れますが、その大きさに驚かれる方も少なくないと思います。通常の注意力でもってメディアの報道を見ている限り、犯罪、とくに凶悪犯罪は増加しているという印象を持っているのが普通だからです。短期間に3割とは大変大きな、喜ばしい変化です。犯罪の増加に悩む国々から見れば羨ましい限りでしょう。

 調査の時期にずれがありますが、04年7月の治安に関する内閣府の調査(図4)によると、ここ10年間で日本の治安は「よくなったと思う」は7.1%,「悪くなったと思う」は86.6%となっています。圧倒的多数が悪くなったと考えていますが、これは事実に反します。

 10/17の朝日には「なぜ素人が法定に?」という裁判員制度を解説する記事があり、その中に同制度の対象となる重大事件の05~07年の実績が載っています。重大事件の総数は3633件から2643へと3年間で約27%の減少です。18種に分類された犯罪の中で、強盗致傷は約37%、殺人は約19%、強盗殺人に至っては約46%の減少となっています。

 朝日はこれを単に裁判員制度の説明資料として載せているのですが、犯罪減少として一面トップに載せてもおかしくない内容です。食品偽装や殺人事件よりもよほど価値があります。治安が良いという安心感が増すことは、人によっては給料が10%上るのに匹敵するかもしれません。不安をもたらすネタばかり追いかけていると不安と仲良くなるのかも知れませんが、不安を深刻に受け止める人もいるという事実に配慮すべきです。ひょっとしたらうつ病増加の一端を担っているかもしれません。

 石油価格が高騰したときは大きく扱いながら、それが低下したときは沈黙するか、小さくしか載せず、また環境ホルモンで大騒ぎしておきながら、指定物質の哺乳類への影響が確認できないとして指定がすべて解除されたときはほぼ黙殺しました。このような報道の非対称性を解く鍵は不安ということにあるのかもしれません。メディアは読者・視聴者を安心させることが何よりも嫌いのようです。

 不安は新聞販売やテレビ視聴率を伸ばし、利益を生むことは間違いないでしょう。反面、不安は我々のwelfare(幸福度)を引き下げます。例えば、医療への不信から不安な気持で受診するのと、安心して受診するのとでは大きな違いがあります。むろん不安が根拠のある合理的なものであれば別です。朝日記事の信頼度が最も低い理由で朝日の突出を指摘したように、故意に歪曲して不安を煽る報道は厳しく批判されるべきです。

 3割もの犯罪の減少を知らせない、あるいは結果的に十分周知されていないという事実はメディアの役割の重大な放棄であり、不作為の罪を犯していると思わざるを得ません。


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (放置医)
2008-10-23 11:53:28
自分にはない視点にいつも勉強させていただいています。
これからも楽しみにしています。
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マッチポンプですかねぇ (田舎村のやすじ)
2008-10-23 16:06:41
僕らは漫然と新聞読んでますが 危ないですねー
昔から物書きは 火の無いところに 煙をたてると言われますが

正にあたってますね
(o^-’)b
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Unknown (okada)
2008-10-25 10:29:23
コメントをお寄せいただき、ありがとうございます。
いつも面白いネタがあるとは限りませんが、よろしくお願いします。
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