Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

高めるべきは経験値

2012-02-14 | アウトドーア・環境
アイスクライミングについて忘れないうちに書き留めておこう。数人に声を掛けて結局誰も来なかった。「なんて臆病者たちだろう」と叫んだが、実のところ水氷のツララを登る意味が分っている者が少ないのである。我々嘗ての特に日本でクライミングを目指していた者にとっては避けては通れない経験であり習得しなければいけない技術なのは当然なのだが、現在のフリークライミングとアイスクライミングの「分業」によって、そうした嘗てのアルピニズムの「カリキュラム」が崩れてきている ― 舟橋健の言う遊びの継承の中身なのだ。それでもミックスのゲレンデのアルプスの壁を登ろうと思えば我々にとってはとても貴重な機会なのは今でも変わらない。

そうして背景もあって、今回の目標はWI5級とされている氷柱を登ることであって、その為に新たにアイスバイルを購入した。そしてそれを試すことが目的であった。結果からするとやはり試してみて初めて分ったことが出てきたのであった。

先ずは、なによりも今度はシュタイクアイゼンの違いが浮かび上がってきた。先週は、飛沫から遠い比較的コムパクトなアイスの部分を登っていたのだが、今回は今も飛沫が掛かる場所と先週から今週へと二倍の太さになった氷柱を登ったのでその相違が確認できたのだ。

要するに困難度WI5となるような場所の氷の形状が違うのである。氷の質は温度さえ低ければそれほど変わらないのであるが、圧倒的に異なるのは飛沫が年輪のようになった氷柱に懸ってそれが更に氷柱となって成長していくために、年輪の表面が断面図で疣のように多角形状になっていることなのである。

そうなると今使っているような岩登りもしくは現代風にドライトューリングをするために二列目が出歯になっていないタイプであると左右の一列目で左右方向に梃子が働いてしまうのである。要するに氷をつま先で蹴り込むのがとても難しい。上から二列目で立つのは容易なのだがそうした足場は氷柱には殆どないのである。

その為に何度足を外したことだろう。打ち込む動作時に足が外れると三点支持どころか一挙に一点にぶら下ることになるのである。ザイルにぶら下がるためにアックスを外そうとすると、それが効き過ぎていてなかなか外れずに外すと頭の上に落ちてくるのであった。

まさにそれは新しいバイルにも関連していて、右手に持って使うとなぜか上手に刺さりにくいばかりか、従来の古典的なバイルの方が効きがよいのである。今度は左手に持ち替えてやると漸く使い方が会得できた。これは従来から繰り返して言われてきていることであるが、バイルは効きが良ければそれだけ抜けにくいので登りにくいのである。要するに良いバイルとは適当に氷に刺さることであって、手掛かりとした後は簡単に抜けるものでなければいけない。

その意味からは新しいバイルは、適当に刺さって抜けてくれるのでやはり使いよいのである。しかし、そのように確実に登るにはどうしても左右に梃子の掛かりにくい、アイス用のシュタイクアイゼンが欠かせない。来年のシーズンには新しいのを購入しなければいけない。

先週も詰めていた二人組みから、他の滝やアイススクリューなどについて情報を仕入れた。WI5を完璧に登り切るには、スポーツ的な技術よりも、用具の選択や判断のための経験が必要である。氷柱の大きさにもよるが、WI5は体力・技術的にはフリークライミングの5c程度のものであろうか。「分業」で合理的に鍛える以上に、高めるべきは継承すべき経験値なのである。



参照:
2月10日 六甲山でのアイスクライミング(シ-ズン終了、近し)  (NEXT DREAM 記憶と記録)
今年最後の氷瀑日和 2012-02-12 | アウトドーア・環境
利き腕の氷瀑モンスター 2012-02-09 | 雑感
コメント (2)
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