Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

楽章間拍手が意味すること

2019-05-12 | 
ベルリンからのSACD発送の知らせを金曜日に受けた。結局それだけでDHLのピックアップは週明けだろう。こんなことならコードも何もついているならjpcで買ってやればよかったと思って、サイトを見る。同じ価格で国内送料無料だが、一週間ほどかかるというから、こちらから注文が入ってからベルリンへ注文するということだろう。しかしそのおまけに関しては言及がない。それならば手を出さない。

面白いのは、購入者の批評で、「その場にいたが、評判ほどの指揮者で無かった」こと、「普通の出来だった」ことで、「チャイコフスキーもびっくりしないチャイコフスキーだ」と厳しい。そもそもこの人がどこでどのように評判を聞いて来たのかと思うが、概ねはサイモン・ラトル指揮のつるつるのサウンドでアインザッツの揃った管弦楽に期待して絶賛する手合いの人だと直ぐに分かった。確かにあれをよしとする人ならば、ロンドン交響楽団でも十分であり、残念ながらそれではラトルの音楽をもあまりにもつまらなくしていて、丁度ジョン・アダムスに感動する人たちとの重なりが殆どではないかと思う。

タカーチ四重奏団とアムランの演奏会は思いの外よかった。まず驚かされたのがガイダンスで、名人のトップ四重奏団だから、ピアニストのトップとの名人同士の共演だと紹介されたことだ。タカーチが三十年以上のキャリアーであることはしばしばその名前を聞いているので驚かないが、長いキャリアの中でそこまでの四重奏団とは一度も聞いたことが無かった。これには疑心暗鬼だった。そして今はハンガリーでなくアメリカの四重奏団だというのは冷戦後には有り勝ちなことなので、そうかと思っただけだ。写真で日系の女性が第二ヴァイオリンを務めていることも分かっていた。

そして一曲目のベートーヴェンの最後のヘ長調のOp.135を弾きだした。先ず何よりもこれは駄目だと思ったのがヴィオラの婆さんで、写真とは異なり、完全に年長組である。ヴィオラが外側でギコギコするのはいいが、何か固い。身体が固まっているようでぎこちない。細かな運弓が出来ていない。これはやはり駄目だと思った。この程度の弦楽四重奏団は幾らでもいると思った。しかし意外に日系の女性が爺婆に混ざった分写真よりも遥かに若く見えて、実際に音を聞いていても弾き方を見ていても、まるで老人ホームで働いているきびきびした若いスタッフのようにしか思えない。若い血の影響もあるのが楽章が進むにつれて、創立メムバーのチェロの爺さんも婆さんとの合わせ方が精妙になってくる。

なるほど世界的に一時は有名だったが、合わせ方が西側のそれとは大分違う。チェコのそれとも違っていて、一時はそれなりに売れていたのも分かった。チェロもそれほど胴音を出さない程度に制御されていて、なるほどと思うところが出てきた。一概にオールドファッションとは言えないが、アルバンベルクカルテット以前のヴィーンのそれらに比べれば完全に名人であろう。ズスケカルテットのような引っ張られるタイプでもなくて、創立メムバーとは異なっていてもある程度その塩梅が感じ取れた。そうこうしていると、温まって潤滑油が効いてきたのか、婆さんのヴィオラもそれなりに味を出すようになってきた。

お目当てのアムランのショパンの後で、プログラムのメイン曲ドホナーニ作曲弦楽五重奏曲ハ短調が演奏された。15歳の時の若書きであるが、中々聞かせる要素がある。何よりもアムランの上に下にのピアノが曲をしっかりと支えていて、精妙な合わせものとなった。そもそもこの四重奏団のアンサムブルからすればこうした五重奏曲の方が成功する。四重奏団が中々ほかのフォーマットでは力を発揮しないのとは異なり、この組み合わせは確かに世界を代表するとしてもなるほど言い過ぎでは無かろう。その証拠に一楽章が終わると拍手が来た。奏者も驚いたようであるが、その価値がある演奏だった。最近は室内楽でもなんでも楽章間に拍手があるかどうかが、曲によってはその演奏の出来のバロメーターになっている感じがある。要するに拍手している人がフライングしたという感じは全くなかった。

そもそもこの会に楽章構成の分からないような人はあまり来ていないと思う。それどころかガイダンスも完全に楽曲分析から美学的な意味づけにまで時間を延長した内容で、完全に音楽の通に向けての内容だった。その内容の程度以上に、四百人程度の聴衆に対して数十人が朝早くからのガイダンスに集まるその知的程度の高さに驚いた。

往路車中で考えていたのは、一体どのような客層がやってきて、復活祭のそれとどのように重なるかであった。逆に、日曜日の朝から詰めかける客層は今後の復活祭の核になれる層で、同時に今までの支配人体制には不足があった層であるに間違いない。(続く



参照:
プロムナード音楽会予定 2019-05-11 | 生活
2019年復活祭の座席確保 2018-03-21 | 文化一般
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする