たった7日間の旅。大好きだったおばあちゃんが亡くなって3か月。僕と従兄弟の2人でワルシャワに行く。おばあちゃんが住んでた家を見に行くために。自分たちの祖国であるポーランドに初めて行く旅。ユダヤ人である彼らの家族は虐殺から逃れるためにここからアメリカに渡って来た。ふたりは移民3世である。アメリカで生まれたアメリカ人だけど、ポーランド人でもある。
ツアーに参加して5日間を過ごす。メンバーは彼らふたりを含む6人とイギリス人のガイド。残された遺跡や建物、施設からユダヤ人の苦難の歴史をたどる。強制収容所では言葉を無くす。
最後の日はみんなとは別れて、ふたりは別行動になる。昔祖母が暮らしていた家を見に行くために。このラストのエピソードが痛い。そこには今では知らない人が住んでいる。普通の民家。だけどここにはおばあちゃんの思い出が詰まっている、はず。家の前まで来て、そこに石を置く。
たぶんこれは何でもない旅。だけど彼らにとっては祖母との別れの旅。全編にショパンが流れる。定番の誰もが知っている『別れの曲』が胸に沁みる。安易に使うのではない。大切に使っている。心を病んだ従兄弟を支えてこの旅に出た。ふたり連れの旅はきっと他者からはただの観光旅行にも見える。だけど、このささやかな旅は彼らにとって大切な1週間になる。空港のベンチで過ごす2時間も。
ジェシー・アイゼンバーグ監督,脚本、主演。これは昨日見たばかりの『僕らの世界が交わるまで』が素晴らしかった彼の第2作。前作以上に素晴らしい。これは派手な映画の影に隠れた小さな傑作。