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映画・演劇のレビュー

柚木麻子『ナイルパーチの女子会』

2015-06-24 21:54:12 | その他

これは怖い。『ランチのアッコちゃん』シリーズの柚木麻子がこんな怖ろしい小説を書くなんて、意外で衝撃。だが、確かにこういう傾向はあったな、と気付く。心地のいいハートウォーミングは、仮の顔で本当はこの小説の中で描かれるような、底知れぬ孤独を抱えた人なのだろう。もちろん、普段はそんな顔おくびにも出さない。読み手を幸せにする小説を書いてきた。それは確かに彼女の個性で、特徴だった。それでヒット作を連発させた。だから、もう本音で書いても大丈夫と、判断した。そんな感じだ。初期の『嘆きの美女』にもこういう傾向は確かにあった。人とうまく付き合えない。女同士の関係が苦手。でも、ひとりが好き、というわけではない。誰かにわかって欲しい。でも、誰もわかってくれない。

完璧な女を演じてきた「できる女」、栄利子。自由に生きてきた翔子。大手商社のエリート社員。自堕落な生活をする主婦。ブログを通して知り合う。正反対に見える2人。

どちらが、どちらを、侵食するのか。ストーカーと化した栄利子が加害者で、付きまとわれる翔子は被害者か。そんな簡単な図式に終わるはずもない。こんなにもドキドキさせられる。人間の心の深淵を覗き込む。見たくもないドロドロしたものが、そこにはある。だが、それがこんなにもリアルで、知りたくはなかったけど、目を背けられない。最後まで見つめろ、と言われている気がする。目が離せない。思い返せば、ずっとそうだった。柚木麻子が書く小説は最初から一貫してぶれていない。今回それが極北にまで至るだけで、これとアッコちゃんとの間には、実は、ほんの少しの差しかない。

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