
3話からなる短編集。カポーティー、芥川、そして、ブラッドベリー。とても趣味のいいチョイスだ。芝居自体もスタイリッシュで落ち着いた空間を提示できており、端正で好感の持てる作品に仕上がっている。
だが、見ていて、なんだかもどかしい。今一歩こちらの胸に迫ってこないのだ。彼らの抱える切実さが伝わらない。原作作品自体の持つ力が、役者の肉体を通して表現されていないからなのか。さらには作品と演出家の間にもいかんともしがたい距離を感じた。芝居がなんだか遠い。だから胸に沁みてこないのか。これがこの芝居の作者である村田絵美さんのねらいなのなら、それって、もしかしたら面白い試みなのかも、って思いもした。だが、冷徹な視線というには、なんだかもどかしさの方が勝るのはどうしたものか。
単純に役者に対しての演出がなされていない、と切り捨てるのはなんだか、惜しい。もう少し違う何かがある、と思いたい。この芝居のアプローチは、原作への愛ではなく、その描こうとする世界への共感が優先する。村田さんはまず幻想怪奇譚というイメージから作品選出に当たったらしい。初めに作品ありき、ではないのだ。自分のイメージのほうを優先した。そこにできた距離感が芝居を決定づける。
1歩はなれたところから第三者が見ているような印象が残る。そこが魅力になったなら、これは成功したのかもしれない。なのに、そこにもどかしさを感じてしまった。それが問題なのだ。
1話は小さな話だ。一人暮らしの女の見た幻想。幼い少女が彼女に付きまとう。だが、彼女は女の幻想でしかない。だれにも見えない。孤独な心情が産んだ幻。二人のやりとりにドキドキさせられる。なんでもない場面が異様なまでもの緊張感を伴う。遠坂百合子さんと竹内真理子さんの醸し出す空気に魅了される。
2話は、二人の男女のすれ違う心の見た幻。これは役者たちの頑張りが空回りしている。難しい役をこなし切れていないから、ストーリーだけしか見えてこない。この家にやってくる犬に対する女の執着が狂気と紙一重のところにあるという危うさを、綱渡りで見せなくては、これは成立しない。
そして、3話。ある男が、周囲の人たちを殺していく。だが、それは死んでいる男が見た幻。世界が逆転する瞬間。生きているものと死んでいるものの境界線。そこを彷徨う主人公の姿をテンポよく見せていくはずなのに、恐怖がエスカレートしていかない。何かが足りない。作品の世界観のようなものが伝わりきらないのだ。その結果よく出来たお話を見せられただけ、という印象を与える。それって芝居として敗北している。
3つのお話を通してこの芝居はどんどん世界を広げていく。1人、2人、そしてたくさん、と登場人物も、描く世界も膨張し広がりゆく。そんな世界の果てには何があるのか。そこが知りたい。作品全体を通して、村田さんはそこまでを提示するべきだった。
だが、見ていて、なんだかもどかしい。今一歩こちらの胸に迫ってこないのだ。彼らの抱える切実さが伝わらない。原作作品自体の持つ力が、役者の肉体を通して表現されていないからなのか。さらには作品と演出家の間にもいかんともしがたい距離を感じた。芝居がなんだか遠い。だから胸に沁みてこないのか。これがこの芝居の作者である村田絵美さんのねらいなのなら、それって、もしかしたら面白い試みなのかも、って思いもした。だが、冷徹な視線というには、なんだかもどかしさの方が勝るのはどうしたものか。
単純に役者に対しての演出がなされていない、と切り捨てるのはなんだか、惜しい。もう少し違う何かがある、と思いたい。この芝居のアプローチは、原作への愛ではなく、その描こうとする世界への共感が優先する。村田さんはまず幻想怪奇譚というイメージから作品選出に当たったらしい。初めに作品ありき、ではないのだ。自分のイメージのほうを優先した。そこにできた距離感が芝居を決定づける。
1歩はなれたところから第三者が見ているような印象が残る。そこが魅力になったなら、これは成功したのかもしれない。なのに、そこにもどかしさを感じてしまった。それが問題なのだ。
1話は小さな話だ。一人暮らしの女の見た幻想。幼い少女が彼女に付きまとう。だが、彼女は女の幻想でしかない。だれにも見えない。孤独な心情が産んだ幻。二人のやりとりにドキドキさせられる。なんでもない場面が異様なまでもの緊張感を伴う。遠坂百合子さんと竹内真理子さんの醸し出す空気に魅了される。
2話は、二人の男女のすれ違う心の見た幻。これは役者たちの頑張りが空回りしている。難しい役をこなし切れていないから、ストーリーだけしか見えてこない。この家にやってくる犬に対する女の執着が狂気と紙一重のところにあるという危うさを、綱渡りで見せなくては、これは成立しない。
そして、3話。ある男が、周囲の人たちを殺していく。だが、それは死んでいる男が見た幻。世界が逆転する瞬間。生きているものと死んでいるものの境界線。そこを彷徨う主人公の姿をテンポよく見せていくはずなのに、恐怖がエスカレートしていかない。何かが足りない。作品の世界観のようなものが伝わりきらないのだ。その結果よく出来たお話を見せられただけ、という印象を与える。それって芝居として敗北している。
3つのお話を通してこの芝居はどんどん世界を広げていく。1人、2人、そしてたくさん、と登場人物も、描く世界も膨張し広がりゆく。そんな世界の果てには何があるのか。そこが知りたい。作品全体を通して、村田さんはそこまでを提示するべきだった。