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習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『ルーム』

2016-04-09 22:01:36 | 映画

少し期待した映画とは違っていたけど、これはこれで刺激的でドキドキさせられた。幼い少女は生まれてからずっと部屋だけで暮らしてきた。外の世界を知らないで純粋培養されたならどうなるのか。そんな彼女が外の世界に出た時、どんなふうに世界を認識することになるのか。予告編からはそんなお話だと思っていたのだが、実際は微妙に違う。

だいたいあの髪の長い子供は5歳になったばかりの男の子で、彼と母親は監禁されていた。7年前母親は誘拐され、ここに閉じ込められ、監禁した男の子供を身籠り、ここで出産した、というお話で、これはなんだか犯罪ものだったのだ。でも、犯人についてはあまり描かれない。背後関係とか意図とかまるで描かない。捕まった後のことは問題外とばかりに一切触れられない。

 

もっと抽象的なお話のように勝手に想像していた。母親は自分の意思で世界を拒絶して子供とふたりこのルームにひきこもる、そんなふうに思い込んでいたから、こんなリアルな設定だということに、最初は戸惑う。しかも、ここでの生活が淡々と描かれるのか、と思ったら、なんのなんの。最初の30分ほどで、子供はここから脱出できてしまうのだ。さらには、母親もすぐに救出される。映画は彼らがここから出た後のお話なのである。これには驚いた。まぁ、勝手に思い込みでストーリーを妄想していた自分のせいなのだが。

 

7年振りで家に戻った彼女の戸惑い。5年間狭い部屋から一歩も出たことのなかった少年の世界への順応。それが丁寧に描かれていくことになる。彼女が誘拐されていた間にはさまざまなことがあったようだ。両親は離婚していて、母親はほかの男性と暮らしている。父親は家を出て一人暮らしをしている。彼らもいきなりの娘との再会、さらには想像もしなかった孫の登場に戸惑いを隠せない。これはそんな家族の物語でもある。

 

人生を奪われ、喪失から帰還した時には浦島状態になり、でも、そこから新しい一歩を踏み出そうとする。そんな親子が描かれる。想像したものとは、まるで違ったけど、これはこれで悪くはない。単純ではない。

 


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