これは大胆な芝居だ。なかなかここまではしない。しかも、こんなにもいいかげんな作り方でお茶を濁す。もっとしっかり作れよ、と思う。でも、思いつきだけで、芝居を作っているから、つめは甘い甘い。でも、そんなところも若手だし、経験も浅いし、何も知らないから、許して! と甘えられたら、仕方ないなぁ、というしかない。もちろん、だれもそんなこと、言ってないけど、そんな気にさせられる芝居なのだ。
こんなにも拙い芝居を見るのは久しぶり。最近、若手劇団を見ることが多いけど、そんな中でもここはピカイチの杜撰さ。いいかげんさ。でも、僕がこういうふうに書く、というのは、この劇団を否定するのではないことは、今までの流れから理解してもらえる(人には理解できるだろう)はず。なかなか見どころがあると思うのだ。技術なんか後で身につけたら出来るようになるけど、心意気とか姿勢とかは、自分たちがもともと持っていなくてはならないもの。このいいかげんさは、なかなかない個性だと思う。
だいたい、ハムレットを翻案して、1時間の作品にして、舞台を現代にして、場所をリビングに限定して、登場人物は4人に厳選して、(というか、4人しか役者がいなかった?)でも、役名は日本人のはずなのに、そのままで、しかも、主人公のハムレットは女の子にして、眼鏡のセーラー服。もう、何が何だか。
しかも、緊張感がまるでない芝居。でも、コメディではないし。笑えない。台本も、まるで仕掛けがない。原作を安易になぞるけど、お話には当然膨らみもないし、杜撰。突っ込みどころは満載。強引なストーリー展開に、ないない、と首を振るばかり。そんな、こんなで最後はみんな死にましたとさ、で終わる。これは大胆とは言わない。唖然驚愕茫然。シェイクスピアって、こんなでしたっけ、と思わず原作に目を通したくなる始末。(確かにみんな死ぬけど、断じてこんなじゃない)
この芝居の意図はどこにあるのか。よくわからない。でも、なんだかきっと本人たちは一生懸命している。その気分だけはちゃんと伝わってくる。4人のキャストはいずれもピントが外れていて、痛々しいような、でも、なんだか、とんでもなく逞しいような。主人公の(一応)ハムレットちゃんは、あまり悩んでない。今時の女子高生だから、というより、この子の個性か。まるで、世界からはみ出しているような(もちろん、死んでるからか?)亡霊となった父親(ハムレットにだけ見える)は、ハイテンションでぶっ飛んでいるけど、場違いとしか言いようがない。そして、実質主役のクローディアスとガートルードのふたり。わざとではなく、(きっと)自然体で、天然。サル芝居レベルの演技を披露する。その大根役者ブリがこの芝居には嵌っている。意図しないところで、いろんなことが、うまく機能してなんだか不思議な作品になっている。こんな芝居だってあるんだ、と思わず元気にさせられる。よくわからないけど、これはそんな芝居なのだ。