
こういうショートショートをわざわざ読むほど僕は暇ではない。だが、たまたま手にとって読み始めたから、仕方なく読んだ。で、おもしろい。そんなことも、わかっている。坂木さんはストーリーテラーだ。星新一に負けないくらい。でも、僕はもう中学生で星新一から卒業した。なのに、これを読み始めてしまったのだ。困る。
この短編集に描かれる不思議は、ちょっとこわい。よくわからないまま、終わるものまであり、それもこわい。オチがしっかりしたものも、たくさんあり、そこは安心する。ばらばらな感じがこわい。でも、そこもまた、含めてこの作品の魅力であり、坂木さんの狙いであろう。
仕掛けがうまい。でも、それを狙いすぎすことなく、提示するのがまた、憎たらしい。18篇の長短合わせて、日常と非日常が背中合わせになる世界が描かれていく。
でも、こういうのって、読んだ端から忘れていく。それがいやなんだ、と思う。そういう貧乏性は困る。