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映画・演劇のレビュー

『コヨーテ 海へ』

2025-01-21 18:47:00 | 映画
2011年のwowowのドラマ。シネスコサイズで1時間49分、堤幸彦監督作品。ほぼ映画仕様。まだ10代だった(19歳)林遣都と佐野史郎(もちろん佐野は10代じゃない)が主演した。たまたままもなく配信終了という告知を見て、じゃぁ見てもいいか、と思って見始めた。つまらないなら10分で止めよう、という程度の気分だ。

ふたりは親子。最初は何を描こうとするのかもわからない。まず、佐野史郎がブラジルを旅する姿が描かれる。何故そこに行きたいのか、何のために行くのかもわからない。さらに林遣都がニューヨークを旅する話が続く。古い写真を手にして。写真の写された場所に行くために。そんなさりげなさに心惹かれて結局最後まで見ることにした。

父が失踪する。息子は父の部屋から出てきた写真を持ってたった一人で初めての海外、アメリカにやって来た。父はブラジル、息子はアメリカ、そんなふたりの旅を交互に見せていく。それをまるでドキュメンタリーのようなタッチで描く。一見観光映画みたいだが、名所旧跡を辿るわけではない。

父は地球の裏側に行きたかった。彼らがいた場所のちょうど真裏にある場所を見るために旅する。今まさに死のうとしていた親友(遠藤憲一)との約束。父の写真にはふたりの男が映っている。1985年、ふたりはニューヨークにやって来た。ケルアックの『路上』を片手に。

ビートジェネレーションへのオマージュ。80年代佐野元春も旅した街。これは彼の楽曲にインスパイアされ堤幸彦が作ったオリジナルドラマ。軽いタッチが心地よい。父と子のそれぞれの旅を通して彼らが新しい地平に向かっていく姿が描かれる。たまたま2011年3月の作品というのも、この作品にふさわしい。


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