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映画・演劇のレビュー

梅田みか『書店員の恋』

2009-02-01 20:25:37 | その他
 まるで一昔前のTVドラマを見てる気分だ。まぁ書いてる人がTVドラマの脚本も書いている梅田さんだから当然のことなのかも知れないが。このままでも連続ドラマに充分なる。

 つまらないわけではない。それどころか面白く読めたくらいだ。だが、なんだか古いわぁ。今という時代の気分はここにはない。20代前半の男女の恋物語。ケータイ小説をテーマに扱い、あんなものは小説ではないと思う書店で働く読書好きの女性を主人公にする。そんな彼女がケータイ小説の王子様にほれられてしまう。お金はないけど大好きな男の子と、大人でお金なんか腐るほどある彼との間で揺れる女心が描かれる。

 ケータイ小説と文芸書の関係って、TVと小説との関係に似てる。そこをポイントにして話は紡がれていく。梅田みかにとってのTVと小説の差がこの小説の中のケータイ小説と純文学の差と重なるイメージとして提示される。彼女が自分の仕事に於けるこの両者をどうとらえているのかが興味深い。

 この小説自体がよくあるTVドラマのような軽さと、それと酷似したストーリーラインによって示されるのも意図的なものなのだろうか。一瞬で読み終わるし、読み終えた後にはさわやかな後味くらいしか残らない。量産されるTVドラマなんてその程度のものでいいのだろうか。時代の風俗の表層を軽くなぞって楽しめるもので充分なのか。ケータイ小説という表現に対するシニカルな認識と、でもケータイ小説への読者の期待。それを充分に満足させることで手にすることが出来るもの。それにどれほどの意味があるのか。そういう視点からこの小説を読んでいくとなんだかこれはスリリングだ。

 3角関係の果て、ヒロインはどちらの男性を取るのか、という結論なんかには何の意味もない。選択という事実ではなく、自分の生き方をどう見つめるのか、ということが大切だということはもう明確なことだ。この小説は「書店員の恋」を描きながら、「恋」ではなく、「書店員」自身のほうにウエイトが置かれている。そこに作家としての梅田みかの心意気を感じる。

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