このアンソロジーを読みながら、村上春樹の解説が一番面白かった、というのは作者たちに失礼だろうか。でも、春樹さんがこれらの小説をどう読んだのかが、とても興味深く、そういうチョイスだったのか、と理解した瞬間、謎が解けたみたいで、ほっとする。なんで、この小説だったのかが読みながら気になるからだ。もちろん、それぞれの小説は個性的で面白い。悪くはないものばかりだ。だが、それだけでは僕には物足りない。それだけにこの簡単な解説がうれしい。
しかも、最後には村上春樹本人による短編が付いている。なんだか思いもしなかったから、得した気分だ。もちろん僕は最後の作品が一番面白かった。結局はただのハルキストじゃないか、と思う。
もちろん、10篇はみんな「ラブストーリー」なのだが、世の中にはいろんな恋があるんだなぁ、という当たり前のことを改めて教えられる。老いも若いも、愛し合うものも、別れゆくものも、さまざまだ。あらゆるタイプの小説が網羅されてある。たまたまのチョイスのはずなのだが、本当にバラエティに富んだ選択がなされてある。個人的には一番気に入ったのは春樹作品を除くと、デヴィッド・クレーンズの『テレサ』だ。このなんでもない話が好き。ある日、14歳の少年が、帰宅するクラスメートの女の子の後を追いかけていく。それだけ。(ストーカーじゃないか!)でも、なんとなく、そうしたくなり、実際にそうすることで、自分の知らない彼女と出会える。それだけのことがとてもうれしい。新しい世界との出会い、とでも呼んでいいくらいに刺激的なのだ。もちろん、何かをするわけではない。何が変わるわけでもない。でも、幸せな気分になれた。
ドラマチックな要素はあまりない。ヒンデンブルクが爆発しても、である。どの話も、平坦なドラマを見せるばかりだ。恋愛小説なのにそれってどういうことよ、とも思うけど、実はそんなものなのではないか。本人たち以上に読者である僕たちが彼らの行動に一喜一憂するのっておかしい。醒めて読むというわけではないけど、少しそんな感じだ。そういう距離感が好ましい。
しかも、最後には村上春樹本人による短編が付いている。なんだか思いもしなかったから、得した気分だ。もちろん僕は最後の作品が一番面白かった。結局はただのハルキストじゃないか、と思う。
もちろん、10篇はみんな「ラブストーリー」なのだが、世の中にはいろんな恋があるんだなぁ、という当たり前のことを改めて教えられる。老いも若いも、愛し合うものも、別れゆくものも、さまざまだ。あらゆるタイプの小説が網羅されてある。たまたまのチョイスのはずなのだが、本当にバラエティに富んだ選択がなされてある。個人的には一番気に入ったのは春樹作品を除くと、デヴィッド・クレーンズの『テレサ』だ。このなんでもない話が好き。ある日、14歳の少年が、帰宅するクラスメートの女の子の後を追いかけていく。それだけ。(ストーカーじゃないか!)でも、なんとなく、そうしたくなり、実際にそうすることで、自分の知らない彼女と出会える。それだけのことがとてもうれしい。新しい世界との出会い、とでも呼んでいいくらいに刺激的なのだ。もちろん、何かをするわけではない。何が変わるわけでもない。でも、幸せな気分になれた。
ドラマチックな要素はあまりない。ヒンデンブルクが爆発しても、である。どの話も、平坦なドラマを見せるばかりだ。恋愛小説なのにそれってどういうことよ、とも思うけど、実はそんなものなのではないか。本人たち以上に読者である僕たちが彼らの行動に一喜一憂するのっておかしい。醒めて読むというわけではないけど、少しそんな感じだ。そういう距離感が好ましい。