なんてバカバカしい芝居なのか。でも、自由気ままにバカしている。そこが久保田さんらしい。女たちは輝いていたはずの12年後の今を生きている。決して幸せではないけど、懸命に生きている。それだけでいい。あの頃(ソフトボールに夢中だった高校時代)と今(退屈な毎日)を対比させ、ノスタルジアに浸るのではない。あくまでもこれは「今の自分たちをみつめる芝居」なのだ。そこにはブレはないからバカバカしいけど、受け入れられる、と言いきれたならいいのだけれどそこまでは言えない。それにしてもここまでバカを徹底するとあきれるけど、楽しいからいいかぁ、とも思う。でも、そこで止まってしまうのはなんだか惜しい気もする。微妙。
これはきっと遊気舎版『テルマ&ルイーズ』なのだけど、(最後の挨拶で久保田さんもそう言っていた)それがそれほど面白くはならないのは女同士の旅がどこに向かうのかというお話の焦点がぼやけてしまうからだ。旅に出た彼女たちが何を思い、どこに向かうのかをもう少し突き詰めて描いたほうがよかったのではないか。これでは途中から『テルマ&ルイーズ』ではなくなる。
彼女たちの後輩のお話とのバランスも微妙だ。主人公ふたりのお話をもっとしっかり描いて欲しかった。総花的にいろんなエピソードを詰め込みすぎたのだ。その結果まとまりのない作品になってしまったのである。ソフトボールの話も中途半端だ。12年前の高校時代、彼女たちがどんな気持ちでソフトボールに臨んだか。それが今の生活とどうつながるのか、つながらないのか。そこも描き切れてない。男たちの追跡もそれを通して何を見せようとしたのか、わからない。ただただバカバカしいだけになったのはとても残念。お話にほんの少しの肉付けをしたら、とてもいい作品になったのではないか。もったいない。