
コロナをものともせずに快進撃を続ける神原さんの新作。2020年以降も年4本のペースを崩すことなく新作を上演し続けてきた。そして今年もこの後7月、9月、11月と公演が決まっている。パンフにも書かれているが、「5年以内に亡くなると明記された心臓の難病を発症してから去年の8月で丸5年を超え」たという神原さんは今、悲壮感なんかなくコンスタントに芝居を続けている。命を削って芝居をして、芝居によって生かされている。
そんな彼女の芝居を毎回見続けることができるって幸せなことだ。僕はもう30年くらいずっと見ている。「今は体力がないから1時間ほどの芝居しか作れない」と本人がおっしゃるけど、本当なら昔のように3時間の大作だって作りたいはず。でも、体が許さない。だけどできることを確実にやり遂げていく。妥協せず、自分らしくあり続ける。それって素敵なことだ。
今回はなんと「過激な社会派アングラ演劇」だという。それってどんな芝居なのか、興味津々で見る。介護施設が舞台となる。そこで暮らす人々と介護をする職員たちとのお話。だが、舞台は施設内ではなく、いつものように野外だ。そこは公園のような空間だろうか。花壇の前でお話は展開する。施設を抜け出した知的障害を持つ青年が一度だけ店に行ってそこで出会った風俗嬢を呼び出して会う。花壇の前で再会するところからお話は始まる。このふたりの恋愛劇をスタートにして様々な人々のドラマがそこで交錯していく。施設の職員と入所者を中心にして、ヤクザとその恋人、公園で暮らす浮浪者たち、総勢14名に及ぶキャストが登場する。
そしてラストではなんと立ち回りまであるのだ。まさかの展開に唖然とするけど、神原ワールドだからこれは当然の展開かもしれない。浮浪者のひとりを演じる今回のゲスト大阪新撰組の栖参蔵がいきなりなんと仕込み刀を抜き、斬りつけるシーンからはいつもの修羅場。なんと5人の死者が出るという怒濤の展開。当然リアリズムではないけど、それにしても平然とこんな無茶な展開をする。それが可能なのが神原ワールドなのだ、と改めて実感する。
客席20名限定の芝居なのに、狭い舞台には14名もの役者が右往左往するし、最後には血の海になる。たった1時間の芝居なのに、恋愛もので、会話劇だったはずなのに、この始末だ。それもまた神原さんらしい。