
こんなタイトルでこの話。これはかなり厳しそうと思っていたが、脚本坂元裕二、監督は塚原あゆ子だから、もしかしたら、とも思う。きっと甘いだけの恋愛映画ではない、はず。
結果、これは『ラストマイル』のような映画から今回の作品に通じる『私の好きだった結婚』までさまざまなタイプの映画で結果を出してきた彼女が本領発揮した傑作に仕上がっていた。そして、これは岩井俊二の『love letter』を思わせる作品でもある。タイムトラベルものという使い古された手を使いながら、その中で誠実に今ある現実と向き合い、不可能な恋を追及する松たか子が愛おしい。40代のおばさんになった自分を通して、若かりし日の彼と向き合う痛い話だけど彼女の想いは彼に届く。大事な人の幸せを願うこと。それがすべてだ。昨年の『夜明けのすべて』でキネマ旬報主演男優賞を受けた松村北斗もいい。彼もまた松たか子同様、29歳の今と41歳の未来を演じる。
15年。出会いの日から別れの日まで。いや、別れた後のひとりの日々からお話は始まり、出会いの日を繰り返す。
離婚届を書いた日に彼は亡くなった。15年の間にふたりの関係は変わってしまった。お互いのことを考えることができない。心が離れてしまった。だけど彼女は彼の死を受け入れられない。こんなかたちでの別れなんて望まない。まだ好きが残っているのかもしれない。歳月は人を変える。さまざまな要因が影響して。
15年前のあの日に戻って再び出会って恋をする。29歳の彼は44歳の彼女を好きになる。夏の日の避暑地の恋。彼女はなんとかして彼が死ぬという未来を変えたい。何度でも出会いをやり直して彼が死なない15年後を取り戻そうとする。だけど叶わない。
やはり甘い話である。だけど、この甘さは嫌いじゃない。ラストの展開も納得いく。彼の選んだ結末も素晴らしい。たとえ15年後に亡くなることになるとしても彼女と一緒に未来を生きたい。もう一度やり直した未来のふたりの大切な日々の描写が愛しい。冒頭で描かれていたことの繰り返しではない。ほんの少し違う幸せな毎日が続く。そして運命の日を迎える。
岩井俊二の『四月物語』で18歳の大学生になったばかりの女の子を演じた松たか子があれから26年を経て44歳になってこの映画に帰って来た。きちんと老いを受け入れて自然なまま中年期の今を生きる彼女が素晴らしい。