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映画・演劇のレビュー

『室町無頼』

2025-01-17 15:31:00 | 映画
入江悠監督はめちゃくちゃ当たり外れがあるからギャンブルみたいなものだけど、今回はこれだけの時代劇大作である。外すわけにはいかない。前作『あんのこと』は今までの彼とはまるで違うパターンの映画だったが、素晴らしい作品だった。それだけに今回またまるで今まで手掛けていないタイプのこの作品にどう挑んだかは、気になる。

東映が『11人の賊軍』に続いて放つこの大作時代劇に大抜擢されたのである。東映としては『11人の賊軍』が作品としては素晴らしかったが、興業的にはまるで振るわなかったからこれを是非ヒットさせたいはず。ということで、これは興業と作品自身の両面から期待された勝負作。

今までにないタイプの時代劇大作であることは認める。荒野のような場所にあるバラックの村、ゾンビのような泥々の人々。そこここに死体が放置されている。その圧倒的なビジュアルには驚く。

しかしまるでお話が面白くない。単調過ぎて退屈。ストーリーに起伏がないし、どこにも行きつかない。主人公の蓮田兵衛(大泉洋)が一揆を率いて何がしたかったのか、も伝わらない。死にいくものたちを束ねて、彼らを助ける。一応はそんな大義はあるけどあまりに安易。目先のことだけでその先の見通しはない。民はみんなが苦しんでいる。貴族は重税を課して安穏としている。幕府を転倒して新しい時代を築くとかいうわけでもない。これではただの打ち上げ花火でしかない。飢饉に重税、飢え苦しむ民を見殺しにできない正義の人って感じだけど、それを大泉洋がやるとあまり嫌みにはならないのはよかったかもしれない。京都の町でのラストの戦いは凄い迫力だけど、虚しい。

ドキュメンタリーのような描写からお話を立ち上げ、リアルな室町時代末期の惨状を淡々と見せてくれるのはいい。それだけにお話にまるで仕掛けがなく、つまらないのは残念でならない。

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