今年初めに二兎社によって上演されたという永井愛の新作(ではなく、2003年作品の再演だった。どおりでお話がなんだか古いなと思ったはずだ)に劇団きづがわが挑む。これは楽しい。わかりやすい展開で安心して見れる。出てくる人たちがみんな悪人っていうのも凄い。しかもスーパーを改革させようとして戦っていたはずのあの店長も、って、なかなか凄い。善と悪の戦いという壮大なドラマを潰れかけたオンボロスーパーを舞台にして描く。
まさかの2時間50分である。(途中休憩10分含む)スーパーのバックヤードを舞台にして、壊れかけた店の再生を描くコメディ作品なのだが、あからさまな対立から主人公の奥様のノーテンキな頑張りで笑わせるという構図を貫く。林田彩がとてもいい。セレブからパートタイマーに。夫の会社が倒産して仕方ないから初めて働きに出た彼女の奮闘ぶりを描く。彼女とバディを組むのは劇団せすんの秋田高志。大きな体を持て余し、狭いロッカーの中に隠れたり、窓から飛び降りたりのお騒がせ。ふたりが不正が蔓延るまさかの職場で結果的に戦っていく。やる気のない彼となんだかわからないけど頑張る彼女。バカバカしいけど、笑える。そして少し考えさせる。この「少し」というところが大事。これは社会派ドラマではなくコメディである。単純に笑わせるエンタメ劇。
これだけの長尺を軽快に見せてくれる演出の林田時夫のフットワークはもちろん軽い。役者たちも元気で弾ける。何よりまず楽しい。それだけで充分である。今の時代、それだけが難しいのだから。