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映画・演劇のレビュー

劇団ちゃうかちゃわん『愛があるかい?』

2023-09-10 10:30:44 | 演劇

現役学生劇団の芝居を見るなんてほんとに久しぶりのことだ。今回たまたま芸術創造館でチラシをもらって、偶然翌週のその日が暇だったから、見ることにした。もちろんそれだけではなく、チラシを見て心惹かれるものがあったからなのだが。

キャストだけで21名。(さすが老舗学生劇団)無駄に多い。もちろん芝居は稚拙。舞台中央には不時着した宇宙船の残骸。上手には階段。上の部屋への入り口が作られている。その部屋には「ヒーローもの」の作家が住む部屋がある。頑張って作ったその舞台美術は立派だ。だが、それがあまり生かされていないのはもったいない。せっかくのその空間が、この物語世界全体を見事に象徴するにも関わらずに、だ。

巨大隕石の衝突まで3週間。残された日々をどう過ごすのか。まるでハリウッド映画のような設定で描かれる大作。21日が繰り返されていく。実はここでは時間はずっとループしている。1995年(たしか)から遡る。なぜこんなことになったのか、と。宇宙人が出てきて、彼らがこの街だけを未来に進ませない。だから隕石はずっと激突しないまま。

舞台美術、さらには肝心のお話自体も、あちこち散らかしたままでまとまりがない。あれもこれもとやりたいことがたくさんありすぎて、収拾がつかなかったのだろう。ヒーローは世界を救えるか、という話も、なぜ時間が繰り返されるのかというも。放置されたままの宇宙船とその周辺というロケーションも芝居の中に生かされない。「ヒーローもの」のドラマの最終回の台本が書かれないまま放置。作家は書けないのか、書かないのか。それは終わらせたくないからか。だから、ヒーローは世界を救えない。

ふたりの宇宙人の対立。宗教団体。殺してもいいという非常事態。散りばめられたさまざまな設定、複雑な人間関係。この世界の謎。面白い要素は山盛りなのに、それが生かされていない。作り手の想いばかりが空回りして作品は残念だが、ループするお話同様、先に進まない。

 


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