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映画・演劇のレビュー

久田恵『主婦悦子さんの予期せぬ日々』

2023-03-07 10:49:12 | その他

先日初めて久田恵の小説『ここが終の住処かもね』を読んでなかなか面白かったので、ではついでに彼女の前作も読んでみようかと思い借りてきた。特段すごく面白いというわけではないのだけれども、興味深い題材をわかりやすく適切に描いてくれていたから、もう一冊と思ったのだ。彼女はもともとはエッセイストなのだが、小説家としてはこれがデビュー作となる。自分の体験を題材にして小説化したのだろう。

主人公は59歳の主婦、悦子さん。定年間近60歳になる(というか直前直後の)夫と共に生きてきた。家には30歳になるのに働かず引きこもり状態の息子が(まだ)いる。結婚していた娘も離婚すると言い出すし(しかも妊娠しているのに!)、さらには一人暮らしの母親(父は3年前に亡くなっている)は80歳になりこれから介護を必要とする年齢だし。そこに50過ぎの弟が離婚して実家に戻ってきたし。さらには、母親が3歳年下の(だから77歳だけど)男と付き合ってようだし。大丈夫か、だまされてないか、再婚とか言い出したらどうしようか、とか。悩むこと、気がかりばかりの毎日。

ここまでやるのか、というようなこんなあまりのベタな設定で、お話を引っ張っていく。まぁ悪くはないけど、ありきたり。やりすぎのてんこ盛りは、読んでいてしんどい。もっとさりげなくお話を綴ればいいのに、久田恵はそうはしない。それはもう『ここが終の住処かもね』で知っていたけど、この前作はあの最新作の比ではない。彼女には書きたいことがいっぱい。だからそのすべてを1冊に押し込もうとでもしたかのようだ。慌てなくてもいいのになぁ、と思うけど、出し惜しみをするのは嫌だったのか。でも、それって出し惜しみではない。丁寧な描写で問題と向き合うほうが小説らしい。ということで、これは小説としては稚拙だ。でも、気持ちはわかるし、読んでいてなるほどな、そうくるか、と楽しめる。

これは先日のTVドラマ『三千円の使いかた』と同じレベルの緩さだ。あれもまた原田ひ香による原作レベルには達していない。要するに「HOW TO もの」レベル。それでは小説とは言えない。中間小説だからこの程度でいいとは思わないし、もっと個々の人間を描け、とかいうのでもないけど、あまりにお話がありきたりのパターン過ぎて共感ではなく、納得レベルで終わるのだ。もちろんこれはこれで悪くはないし、読んでいるときには楽しめたのだが。


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