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映画・演劇のレビュー

『プロメテウス』

2012-08-26 18:16:30 | 映画
 これが『エイリアン0』であることは、事前に分かっていた話だし、それなりの覚悟はしていたけれども、それはものの例えで、ここまであからさまなものだとは思いもしなかっただけに、あのラストシーンには驚いた。これでは、先日の『遊星からの物体X ファーストコンタクト』と変わらない。リドリー・スコットともあろう人がこんな安易な映画を作るのか、と、それにも驚く。

 人類の起源をたどる旅、という触れ込みだったから、そういう『2001年宇宙の旅』的な哲学的内容の映画なのか、と思っていたが、ただのホラーだった。確かに壮大なスペクタクルだし、堂々としたタッチで話は進展していく。重厚な大作の雰囲気で。だが、それはただのフリだったのか、と終盤に到って気付かされる。冗談のような映画だ。安っぽくて、安直で、深遠なテーマなんかない。なんちゃって、とリドリー・スコットが言う声まで聞こえる。でも、この騙された感は、悪くはない。どうせ映画はハッタリが身上だ。凄いフリして、実はバカ、というのは、それはそれで立派ではないか、と思う。だからこの「やられた!」という気分は、悪くはないのだ。

 こけおどしの大作。なんかとても凄くて、驚くような大胆なテーマが隠されていて、映画を見終えるとなんか賢くなった気分にさせてくれそうで、バカが売り物の安物のハリウッド映画(誰もそれを『アベンジャーズ』とは言わない!)ではなくて、大人の映画の雰囲気満載。

 でも、『エイリアン』なんか、もともとあんな映画である。なのに、神話的な伝説の映画になった。『ブレードランナー』に到っては、もともとただのハードボイルドタッチのSF映画、という程度の認識である。でも、それが今ではこんなことになっているのだ。そう考えると、今回伝説になるような雰囲気で始まり、こんなものになる、という何とも人をバカにしたような映画を彼が確信犯的に作ったことに僕は「やられたなぁ」とニコニコ出来る。この大作映画のバカぶりは立派だと思う。

 映像はすばらしいし、映画自身の緊張感もかなり持続する。2時間4分、一瞬である。ラスト10分は、見なくてもいい。『アベンジャーズ』のクレジット後のラスト数分の素晴らしさと比較する気はさらさらない。

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