1974年
この日の朝、新品のスパイクをはいて初陣のコーチスボックスに立ったヤング阪急の上田監督。「勝敗はどうでもいい」と試合前語っていたが、一方的な大差で大勝するとさすがにうれしそう。「自分の思い通りの野球だった」とその喜びを隠そうとしない。春眠をむさぼるトラを一撃に倒して勇者は覇権奪還へ気迫のスタートだ。阪急は前日の高知キャンプまで若々しさ、ガッツ野球を目ざした。そしてこの初戦に「とにかく元気のある野球」を上田監督は目標にした。選手たちの動きも活発、ベンチの声合戦でも沈黙の阪神とは対照的に大声の連発。あの無口な長池も大声を出して守り、高井も初ホーマーを打ってホームインすると高々と帽子を上げるハッスルぶり。「試合内容はもちろんやが、元気でもうちが勝っとったぜ」-上さんは明るく大声で話す。「試合は当然相手が仕上がっていないのだから勝つと信じていたが、一回の正垣、大橋、中沢の連打による先取点の点の取り方といい、いうところなしや」と話し「やはりきょうは相手の不振とはいえ竹村、新井がよう投げた」と目を細める。その竹村、昨年大洋から阪急入り、たちまち8勝をあげ「ことしは一番期待する」と監督も目をかけている。球場から約1㌔、安芸郡安田町の出身。つい六年前、安芸高時代、甲子園を目ざして猛練習した。そのグラウンドで力一ぱい投げた。3回投げて被安打1、自責点0の文句なし、田淵には直球、シュート、外角カーブで3球三振「大洋時代ベンチから阪神打線を見ていたが、投げるのは初めて。それにしても阪急の紅白ゲームよりこわくない」と不敵に笑う。上田監督も「竹村はスピード、配球とも文句なしや」と単調な仕上がりに首をうなずかせる。がっちりとレギュラー入りの切符を手にした竹村。それにしても上田監督は福本が出るとすかさず二盗、投手には真っ向から勝負させるなど積極的な男らしいさい配ぶり。「ガッツが売り物。ことしは一本勝負で真っ向から突進するぜー」鼻息荒い青年監督だ。
この日の朝、新品のスパイクをはいて初陣のコーチスボックスに立ったヤング阪急の上田監督。「勝敗はどうでもいい」と試合前語っていたが、一方的な大差で大勝するとさすがにうれしそう。「自分の思い通りの野球だった」とその喜びを隠そうとしない。春眠をむさぼるトラを一撃に倒して勇者は覇権奪還へ気迫のスタートだ。阪急は前日の高知キャンプまで若々しさ、ガッツ野球を目ざした。そしてこの初戦に「とにかく元気のある野球」を上田監督は目標にした。選手たちの動きも活発、ベンチの声合戦でも沈黙の阪神とは対照的に大声の連発。あの無口な長池も大声を出して守り、高井も初ホーマーを打ってホームインすると高々と帽子を上げるハッスルぶり。「試合内容はもちろんやが、元気でもうちが勝っとったぜ」-上さんは明るく大声で話す。「試合は当然相手が仕上がっていないのだから勝つと信じていたが、一回の正垣、大橋、中沢の連打による先取点の点の取り方といい、いうところなしや」と話し「やはりきょうは相手の不振とはいえ竹村、新井がよう投げた」と目を細める。その竹村、昨年大洋から阪急入り、たちまち8勝をあげ「ことしは一番期待する」と監督も目をかけている。球場から約1㌔、安芸郡安田町の出身。つい六年前、安芸高時代、甲子園を目ざして猛練習した。そのグラウンドで力一ぱい投げた。3回投げて被安打1、自責点0の文句なし、田淵には直球、シュート、外角カーブで3球三振「大洋時代ベンチから阪神打線を見ていたが、投げるのは初めて。それにしても阪急の紅白ゲームよりこわくない」と不敵に笑う。上田監督も「竹村はスピード、配球とも文句なしや」と単調な仕上がりに首をうなずかせる。がっちりとレギュラー入りの切符を手にした竹村。それにしても上田監督は福本が出るとすかさず二盗、投手には真っ向から勝負させるなど積極的な男らしいさい配ぶり。「ガッツが売り物。ことしは一本勝負で真っ向から突進するぜー」鼻息荒い青年監督だ。