きょうrugbyは、陽気な風に乗って本当の母さんのところへ帰りました。兄弟にも会っています。 心配しないでね。
18年と76日、 たくさんの元気や笑顔、勇気をもらいました。里のIさんに連絡すると「ながい間、可愛がってくださってありがとうございます。しあわせな犬でした… 」とおっしゃられた。
なんだか、rugbyがそう言っているように思えて、ふぁーっと涙があふれた。
ラグビー君 こちらこそ、 たくさんの幸せをありがとうね。 最後までほんとうに賢くていい子でした。 ありがとう。
日向で眠りこける犬も、 寝ながら尾をふったり、 前足で宙を掻くようなしぐさをする。 耳をぴくぴくさせたり、 吠えるときもある。 きょうは大きな相手にひるんだか、うなされている。 追われているらしい、 悲鳴に近いものだ。 犬も夢を見る。
rugbyがきて間もない頃、中国がえりの友人から聞いたはなし。
都市で犬にあわなかった。 あれは食べられちゃったのよ。
こちらが仰天するのもかまわず
『あそこでは、犬を連れたひとがくると 『まあ、美味しそうな犬ですこと』 って挨拶するの。 おいしいか、いくらするのか それが問題なのよ』
『日本のように 『可愛いワンちゃん』 なんて言わないの!』 と続けた。 話したくて仕方がない。
そして 『とくに…』 で、 身を乗り出して
『黒い犬がいちばん美味しいんですって…』 と 念を押す。 腰を抜かして 「嘘でしょ!」 と叫ぶのを待っている。 あのころは聴力抜群の彼にも聞こえたはず、 奇妙な趣味のそのひとが浮かんでくる。
☆
視力の落ちたrugby は 冷たく、しめった鼻を押しつけて 「あ、母さん ここにいたの」 と確かめる。 かわいさ余って、おまえを食べることは絶対しないからね、 安心してと山姥は思う。 背を丸め、ちぢまる寝姿は、やはり100歳。 夢は枯れ野を駆けめぐる。 どうせ見るなら、 いい夢であれ。
たしか去年、 かの国でもペット犬を飼うひとがふえたと報じていた。 食の習慣はまだあるらしい。
すさまじきもの、昼ほゆる犬に、異文化を加えよう。 祭祀や薬効に関係があるらしい。
餌は17年間、変わらない。 毎朝、鶏のささみをゆでて2本 夕方ドッグフードを専用のカップに1杯、最近は2分の1ほどを食べたり食べなかったり。
ひとが食事をするときは、 今はきちんと正座で待っている。 以前はこうはいかなかった。 くんくん鼻をならして、 文字に直せないが 「ブゥ」 だか 「ぐぅ」 だったか複雑な音色。 ターシャが言う 「豚の鼻」で大騒ぎした。
ときどき膝に手をかけ上目遣いで 「ねぇ、ねぇってば! ここにいるんだけど」 とアピールする。 無視すると、ひときわ高く 「ワン!」 とだめ押し。
アイスクリーム、おせんべい。 特にキュウリ、林檎、焼き海苔がすき。 なぜか麺類には目がない。敵討ちでもあるまいが スパゲティ、 そうめん、 ラーメン、 うどん、 そば、 細いものなら何でもござれ。 つるっと成敗する。
家族の一員として一口ずつのつもりが、 じっと見つめられると蛙は勝てない。
「これだけよ」 は何の意味もないことを rugbyはとっくに学習している。
きょうは得意技について、手短に! お話しします。 皆さんもやってみて下さい。
① なんと言っても、5,6軒先のお宅まで、 よく通る大きな声で、お客が帰るまで吠えつづける技でしょう。 ここはもう、歌うつもりで。 もしも、 騒音にしか聞こえなかったら、 あなたに鑑賞力がないと思ってね。
大声だすと気分爽快ですよ! たとえ叱られても声援だと思うことがだいじ!
② これは遺伝子のなせる業とも言へり。 座布団穴開けの術、 座る前に、まずお掃除を。 ササ、サッと両手で払い、 おもむろに猛スピードでひっかくと、やがて見事な穴があきます。 中味を引きちぎるのも面白いでしょう。
③ ドッグフードは口いっぱいつめ込んで、すこし移動してからパラッと蒔きましょう。
うまく散ればおなぐさみ。 あくまで、床に点描するつもりで、美しく! 鼻の先で、あしらいます。
急に秋風… どうぞ、 お風邪を召さぬよう では また…
冷やかにただ一言の美しき 橋本鶏二