ドアの向こう

日々のメモ書き 

ラグビーの休暇

2005-08-07 | 犬のブロンコ・ダン
 
 早くも立秋、raguより 残暑お見舞い申しあげます。
まだまだ続くんでしょうな、この暑さ! 連日35℃以上。2階なんぞ
40℃近いですよ。

 夜間も冷めませんなぁ。 昼夜エアコンのお世話になっとります。
 父さんは「お前は贅沢だ!」などと申しますが、黒の毛皮は想像以上に暑く、いっそ脱ぎたい。が、着替えがないそうです。いちど経験してみろ! と言い返す気力も失せました。 17歳ですぞ、人なら、じき100歳だそうな…
 
 日盛りにお出かけが多く、ひっそりと静まりかえる界隈です。最近は昼寝と決めて、遠出もなく、今は昔の夏休みなど思いだしています。

 半年くらいで車に慣れ、長距離でも酔うことがなくなった。家族を伴い伊豆や八ヶ岳、軽井沢あたりへ毎年行ったもんです。皆はホテルで、raguは駐車場でやすみました。夜中、見回りの人に照らされ、大声で叫んだこともありましたな。

 常はソファーで、家族に子守歌など歌わせ、父さんが脱いだばかりの靴下を枕に、残り香を楽しみつつ眠るのでしたが。
 朝になればご馳走をこっそり持ってきてくれ、散歩に出ます。朝もやの冷気が好きだな。一度来たところは忘れませんよ。マークの場所も決めています。

 木漏れ日の中を快調に進むと、五差路に出る。角の大きなクルミの木は良く覚えて、しっかりマークを付けましたな。今頃行くとまだ青い実も落ちていたっけ。

 雲場池まで間もなくです。なつかしい! 鴨さんとは友だちになりました。池の周りを毎年歩きました。ツーショット写真もあるはずです。

 伊豆城ヶ崎では全長48m・高さ23mの門脇吊り橋も渡りました。たいそう揺れましたな、足下に海が見えスリル満点、母さんは青い顔してました。raguは変わらず真っ黒で何があっても顔に出ません。
 しかし、及び腰で…  11年まえの写真なんか出して! 
 今は、面影ありませんなぁ
 
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くわばら

2005-07-21 | 犬のブロンコ・ダン

 その日も朝ぐもり、茹だるような暑さだった。
夕方、涼しいときを選んで、ラグは散歩に出る。おきまりコースは三通りくらいあるが、どれも先導できるほど熟知している。

「いってらっしゃい」 いつものように見送った。
 10分もしないうちに、「クッ、クッ クーン」
「キャン、キャン」 玄関のあたりが騒がしい。

 

いま出たばかりじゃない、絶対よその家だと決めてかかる。

 それでも止まず。 ここ開けて!と、必死に叫んでるんだ。 
 おそるおそるドアを開けると、小さな彼がぶるぶるしながら待っていた。
  「どうした? 父さんは?」  「…・・・…?・・」
  「おいて来ちゃったの?」 「…!!・・!」

 待てど暮らせど夫は帰らない。一体、どうしたのよ! 何があったの? 無口な犬では埒があかない。

  しばらくして連れがヨレヨレになって戻ってきた。
 rugbyに代わって言うことには

 靴ひものほどけを直す間にいなくなったこと。何度も名を呼び、草むらやいつも通る道を、必死に追い、探し歩いたこと。
 「なんだ、真っ直ぐ帰ったのか」 と苦笑する。
 rugbyは素知らぬ顔で、ぴちゃぴちゃとミルクなんか飲んでいる。

 思えば、車が行き交う大通りを二つも横切ったことになる。 綱をひきずり、猫ぐらいの犬が横断する姿を想像すると、「よくぞ、ご無事で」 
 蛙は目頭が熱くなるのだった。
 
 追っかけ、稲妻がやってきたことは言うまでもない。
 犬は舌をだらんと出して、ハアハアしながらひたすら祈る。涎で床がびしょびしょだ。
  蛙も一緒にくわばら、くわばら。 雷、大っ嫌い!
 
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朝ぐもりに注意!

2005-07-19 | 犬のブロンコ・ダン
 
きのう梅雨明けした。朝からモワッと蒸している。きまって午後になると晴れてくるんだ。 そんな朝ぐもり(朝曇)を横目に、
 『世の中に、わぅー たえて 雷のなかりぃせば… 大嫌い! 』 とrugbyが言う。
 それはねえ…

 庭で遊んでるときだった。出し抜けに息づかいも荒く、歯の根も合わずといった感じで飛びついてきた。目がすわり、はあはあと、ただごとでは無い。 こちらは何がなんだか訳が分からない。
 へえ! お前にもこわいものがあったのかい? 
 庭に、そんなの住んでたかいな? と呑気である。

 人には分からない電磁波を、テレパシーで捉えられるのか。嫌いな音波も即座につかまえる。遙か山向こうのそれだって、キャッチできるらしい。  

 ひとが変わったような彼は 「さあ、上がろう! 速く! 速く!!」と、敷居に足をかける。放っておいたら、泥足で上がり込んでしまった。
 膝に無理矢理とび乗って、がたがたと震えながら、かじり付く。涎まで垂らしている。 こんなに気に入られたって、なのである。 その頃になってやっと、蛙にも小さく雷鳴が聞こえてくるのだった。 

 ご先祖がよほど怖い目にあったんだね。しっかりDNAに組み込まれ受け継がれている。
 蛙には何の前触れもなく、彼だけがそれを察知してパニックになる。猪のごとく突っ走る。散歩先でも、勝手に公園をぬけ、猛スピードで車道に出てしまう。危険この上ない。輪禍で命をおとす仲間を何度も見ていた。

 近所には、鎖を引きちぎり逃亡したものさえある。3日間、音沙汰なくて諦めていたところ、保健所から連絡があった由。引き取りに行くと、顔をくちゃくちゃにして飛びついてきたそうだ。目もくぼんでやつれ、哀れだったそうな。 翁丸かい? 主人に再会し、心底うれしそうだったと、涙ぐんで話していた。

 ゴロゴロにビックリ仰天、飛び出したものの、雷雨の中をさまよい、家も分からなくなったのね。線路を越えてさらに西へ、余所の庭に潜んでいたところを保護された由。それは優しくしていただいて。 それでも元の家を忘れず、物思いに沈んでいたとか… 

 夏本番! 雷の季節である。
 それは太鼓や、爆竹の音でも同じ。何度遭っても慣れません。
 夏祭りや花火大会は、ご遠慮したい。 
 
 こうして、朝ぐもりの季節は、じつに恐ろしいのである。
 今は聞こえないから、平和なんだ。rugの心はのどかなるらし~

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らぐびーの日曜日

2005-07-05 | 犬のブロンコ・ダン
 帰省中のたこさんとのお約束のために… 
お楽しみrugbyの日曜日 はじまり!はじまり!

 rugby7ヶ月目…
 ボール投げて! 何度でもせがむ。疲れを知らないのだ。グランドのはるか向こう、疾風(ハヤテ)とはこのことか、走る姿はサラブレッドのよう。
 体中にみなぎる緊張感! 腿の筋肉は波打って、細い足して、小さいながら競走馬のごとき華麗さ。ほれぼれする。
 この一瞬を描けたらなあ、何度も思った。

 夏がきて、散歩がてら不惑クラブにお伴する。そこで離したからたまらない。相手は ド、ド、ドン。ドシ・ズシン! 巨漢のおじさま方である。
まるで○の弾丸! 失礼!
 「あらあら、やめて! いっしょに戦えないよぉ  足、踏まれちゃうよ」

 「言ったって聞かないよ~」と、しましまソックスの間を縫うようにくぐり抜ける。あざやかだ。日頃の修練ね。
 ばて気味のみなさんを尻目に涼しい顔。
 輝くような笑顔?で 「やったよ、母さん… はあは! たのしい!」といちいち報告にくる。単に父さんのゆくえを捜すだけかも知れないが。みんなが見てるじゃない、と思いつつ内心誇らしいのである。えぇ、親馬鹿になりました。
 これまで他の飼い主を見るにつけ、ああはなるまい!と堅く決めていたのですよ。全くね。

 こうしてrugbyはクラブのマスコットになる。毎日曜は車に乗って、意気揚々と大学のグランド通い。学生対不惑、お前はどっちに入るんだい?
 大型犬以上の運動をして、満足このうえない。
 午後は睡魔と戦うこととなった。

 蛙の週末はサッカー少年団に取られ、rugbyは退屈だった。ちょうどよかった。父さんといっしょのクラブは至福のとき。大活躍したが、残念! 写真はない。
 どうぞ、ご想像ください。
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雨の音 ♪!

2005-06-15 | 犬のブロンコ・ダン

 今日は雨  !.. !!・ ♪.・ !!♪ 
   しずかな時間 
    昨日のぐちゃぐちゃノートを整理する。散歩もないしな……

    こいぬの はなに ぴこん
   こねこの しっぽに しゅるん
   かえるの せなかに ぴたん
   すみれの はなに しとん
   くるまの やねに とてん  
           
いろんなおとの あめ 岸田衿子から抜粋

 それぞれに それぞれのおと いつまでも童心
    
            

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わん力

2005-06-13 | 犬のブロンコ・ダン

 小さな躯、ほそい足。贅肉なしの精悍な若者になった。走るのが大好きだ。公園でも狭い庭でも「ボール投げて!」と陽気な顔でやって来る。期待に眼をきらきらさせて「はやく! はやく」とせがむのである。

 なぜわかる?とお思いでしょう。これは日々のつきあい! 密度の濃さ! 飼い主はその声、眼の色、動作から、雰囲気で、何もかも分かるようになってしまうものです。
 
 第一、吠え方が違う。甘えたように、ここは軽く、快活に、「わん! わん!!」 警戒のそれとは全くちがう明るい声。
 仕事そっちのけで、ずいぶん相手をしたものだ。


 タオルの端を銜えての綱引きもある。犬の力は躯前方に集中しているようだ。前足の踏ん張り、頭と首の力が異常につよい。体高およそ30センチ、胴の長さ50センチくらいだが、ぐいぐい引っ張る。

 リーダーになりたい、先頭を歩きたい。お年寄りなら引きずられ、転倒しかねない。小型犬でこれだから、大型犬のそれも推測できよう。
 しかし、後ろ足はふらふらなのだ。向きを変えたいなら、指一本、おしり横にあててくるっと廻せば、簡単に方向転換できる。前後の力の差、ほんとうに驚く。

 布を銜えぶるぶる振り回すのが得意。むち打ち症にならないかと心配するが、本犬はけろっとしている。「どうです? すごいでしょう?」と、眼が言っている。
得意気な気色が、黒い顔に浮かぶのである。

 おしゃぶりを、よく与えた。大型犬用と思われる特大サイズだが、脇目もふらず1時間でほどく。恐るべき集中力! これのおかげか、歯は全部そろっている。未だ1本も失っていない。
  ただ今17歳6ヶ月
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アイドルの座

2005-05-27 | 犬のブロンコ・ダン
  話を前にもどそう

 四ヶ月頃から。耳はろうそくの炎のような形で立ち上がり、かすかな音にも反応した。まるでパラボラアンテナだ。キャッチした音に沿い、寝ていても向きがすこしづつ変わる。熟睡はないらしい。

 TVの音量にも左右されず、室内にいながら門が開いたのがわかってしまう。さすが感度よし!
 アンテナは野鳥のさえずりを拾い、猫の進入をとらえた。お菓子の缶を開ける、袋をやぶる、ゆで卵をむくかすかな音、キュウリを刻むおと。おどるように、どこにいても跳んでくる。

 嗅覚たるやおそるべし、サッシやドアの向こう側にいるひとが家人か、そうでないか区別する。見えなくても関係ない。河原で石を投げる。何百、何千という石ころの中から、たったひとつ 主人が放ったそれを探し出すという。ひとの何千倍、何万倍だというのも聞いた。
 
 すっかり成犬の姿だが、スリッパはぼろぼろ、ソファーに穴をあけ、やんちゃぶりが目立ってきた。
 外出から戻ると態度がおかしい。叱られる前に、きっちり自己申告だ。そこは偉い! ほんとは偉くない誰かさんにも聞かせたい。
 いつもなら声を裏返し、飛びついて「はあ、はあ… お帰りなさい」が盛大につづく。たとえ短時間でも。

 まずは迎えに出ない。奥で、なんかよそよそしい、伏し目がちに固まってふるえる。かわいそうな犬です、と演技する。
やっぱりね! 決まって何事かおきている。

 呼んだって出てこない。
 「よし!!」の一言をひたすら待っている。
それがまたいじらしくみえるのだから、困りものです。

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再会

2005-05-24 | 犬のブロンコ・ダン
    話はとんで…

 Iさんにラグビーの成長を、見ていただこう。11月約束の日、
 千駄ヶ谷の明治記念公園は途中から雨になった。
 
 車を降りると、とおく足下に小型犬がいる。母さんだ! 何となくふっくら、顔立ちも柔らかい。
 ラグよりひとまわり小さい。4キロぐらいかな。こちらは、とびきり大きかった父に似て、いまや6キロもある。
           
            -☆-

 母さんは愛しげに黙って見ている。忘れていない目をした。けれど「ぼくは犬じゃない、あんただれ? やだよ」と言っている。
 「知らない 知らない!」と逃げまわる。

 そして 「お母さん… どうしよう?」という風に、こちらを見あげ訴える。確かに目がそう言っている。(すでに家族の誰とでもこころが通じていた。こちらの言うことも、ほとんど理解できた)

 綱をひいてそばによると「がうー 」と一蹴。威勢のいい声して震えてる。及び腰がとても可笑しかった。  
 母さんはうらめしそうにIさんの後ろにかくれる。ごめんね、なんだか申し訳ない。9ヶ月ぶりの親子再会は何のドラマもなし。
 期待しつつやって来たけど…

 雨は激しくなり真冬の寒さをつれていた。この日ドッグショウがありトイマン♂の部、出場たった二頭中一位になる。笑われちゃうわ。興味はまったくなかったが、実家のご主人Iさんのために面目躍如。トロフィーをもらい写真も撮られた。



よそ見をするラグビーと みつめる母さん

     ~。:`,~ ~。:`,~ ~。:`,~ ~。:`,~ ~。:`,~

 おいらは、いつも仲間に入れない内気な犬さ… それは今も変わらない。
 人だと思いこんでいるらしい。
 けさは勝手口のたたきに落ちた。段差30センチあまり。下で呆然としている。抱き上げると ト・ト・ト・ト、はやがねのよう。
びっくりしたね、お前も私も。 とつぜん姿が消えたんだもの。 
 視野は狭くなり慣れたところだけ、弱まった嗅覚と光をたよりに歩ける状態。
声は大きく食欲もあり。小さくなって疲れがみえる寝顔にあわれをもよおす。がんばって!
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刷り込み

2005-05-13 | 犬のブロンコ・ダン

 ホトトギスやカッコウではないが、刷り込みが起こった。どうやらrugbyは、「おかあさんだ!」と学習したらしい。顔を脇のしたに入れて安心して眠る。ときおり目玉を動かしている。内側にちいさなぐりぐりが伝わった。

 わざと、大きくふかく息をしてみる。当然、母犬もどきの胸やおなかが動いて彼に伝わる。
すると「フーッ」と肩をあげ大きく吸ってはく。くりかえすたび、応えるようにそれは続いた。きっと母犬のあたたかさと、なつかしい息づかいを確かめていたに違いない。

 毛が短いせいか、すごい寒がり。かわいそうなくらいぶるぶる震える。以後、ヒーターの前にしっかり陣取り動こうとしなかった。

4月(生後3ヶ月過ぎ)あたたかくなって初めて外に出る。不安気なあしどりで地面をあるいた。何もかも珍しい。月面着陸の飛行士のように、ひょいひょいとバランス悪くはねるように歩いた。土の感触を愉しそうに確かめた。
 
 rugbyはときおり顔をあげ、目をほそめ、ひかりに向かった。鼻をひくひくさせる。うららかな陽差しを、そのにおいを、花の香を感じているようだった。嬉しそうだ。生きるよろこびを共有する。それほど大げさに思ったのも忘れがたい。
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響く鼓動

2005-05-07 | 犬のブロンコ・ダン

 家にきて10日たった。
 すっかり慣れてのびのびしてる。ブルーの瞳だ。

 1日目は家事もしごとも手につかず抱いてたっけ。胸に抱くと頭を脇の下につっこんで眠る。やわらかく温かい。鼓動がつたわる。こちらが息をふかく吸い込むと、答えるように「フーッ」とながい息をした。

 下におろすと直ぐに鳴きだす。
 甘い子育て、このままじゃきっと、手に負えなくなる。
 とにかく小さい、かわいい! 
心を鬼にして躾をはじめる。そそうしたら匂いを嗅がせ、「ここはいけない!」とおしりを叩く。何度か繰りかえしトイレをおぼえる。まちがえば、叱られることが解ったようだ。

 ついつい失敗。そんな時は先まわりする、椅子の隙間にもぐりこむ。こちらの手が届かないことを計ったように。賢い!
 呼んでも出てこない。からだを縮めうしろむきの背中が、実に申しわけなさそうにしている。とにかく目を合わせない。まわり込み間近にのぞきこんでも視線をそらす。
 おやつを見せても、断固! こらえる。

 なおさら愛しさが増すのだった。
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思いがけない喜び

2005-05-01 | 犬のブロンコ・ダン

 わかれ際の 「犬はお好きですか?」
「えぇ、好きです。むかし飼ったことがあります」
たったこれだけの簡単なやりとり。
 夫と、仕事がらみで知り合ったI氏の会話である。

 話しはこれだけで終わらなかった。
 
 翌1988年1月31日、陽気なチャイムが鳴った。
おもてに大柄で柔和な紳士が立っている。
「犬を連れてきました」
 何も聞いてない。突然のことで、家族はあっけにとられている。
それらしき荷物もなく玄関に入ってきた。

 やがて上着のポケットにさわり視線を集めると、まるで手品師のようなあざやかさで、取り出したのはオモチャのような子いぬ。
 片方の手のひらにちょこんと載せてみせた。

 わあ、かわいい! ぬれたようなつぶらな瞳がじっと見つめる。
くんくん鼻を鳴らしてる。ちっちゃいのがうごいてる! 
何かまさぐるようなしぐさ。いとしさに釘付けになる。
 犬は好かないと言ってた母まで夢中になった。

 「ほら、こんなに延びるんですよ。」と首周りをつまんでみせる。
皮膚はずるずると自在にうごいた。狭いところに潜りやすいためだ。ご先祖はネズミを捕っていたらしい。

 世話をする暇もないし。高額なペット犬のことも耳にしていた。
お金を出してまで飼う気持ちもないな… しかし、
それを言えるだろうか。
 家族は顔を見合わせ、目の前のやんちゃな瞳と心の中で格闘していた。
 
すると「良かったら差しあげます、世話していただけますか?」
 「もちろんです。よろしいんですか」
またまた、唐突なご厚意をお受けしたのである。
 
 Iさんにはいつもびっくりさせられる。
いきなり庭箱を贈られ、カナリアを飼うことになってしまった、昔のことも思い出す。
 
 トイマンテェスター・テリア 
(ブラック&タン。短毛。成犬でも3.5キロ) 
なまえはホクセン・リバーズ・ブロンコ・ダン
 こうして新しい家族は、みんなを虜にした。
 あまりに長い名前、愛称Rugbyに決める。
思いがけない小さな贈り物は、家族をしあわせにし、一つにまとめる大きな力をもっていた。
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犬のための前奏曲

2005-04-22 | 犬のブロンコ・ダン

 「Hi! ホクセン・リバーズ・ブロンコ・ダンです。緑の風が
心地よぉく鼻をくすぐります・・・」
 
 ブロンコ・ダン=我が家では、ラグビーと呼んでいる。トイ・マンチェスター・テリア、うちにきて十七年になる。とても賢い。人だと思いこんでるラグビーと、限りなく犬に近づいた私達のおかしな暮らしだ。

 噂をすると「ぼくの話しね?」と目が言っている。また、かぞくの応援に出かけたはずのグランドで、不惑のオジサマ方と全速力でかけまわり、毎週ゲームを愉しんだ。走るすがたは、まるでサラブレッドのよう。大好きだよ。

 すらっとした長い足、人のまつ毛くらいの毛は、黒いビロードのようにかがやく。だいぶ耳や目が悪くなったが、声の大きな、威厳あるガードマンぶりだ。歯は全部そろっている。
ほかの兄弟達は元気だろうか?

 彼はシャンプーのあと生乾きで大騒ぎする。いつもの儀式だ。
家中走り回りソファーの上でゴロン! 背中をこすりつけたり、手脚をぐっと伸ばし水泳のように掻いては拭ってしまう。
 この生まじめ君に、居間は乗っ取られてしまった。

 ちかごろ家族の靴下がないと眠れない。油断するといつの間にかくわえてる。
 その自慢げなことといったら… 
ひとの視線を意識したような首筋に「どう?この早わざ」って書いてあるような… 追いかけないと不満げで、取り返そうにも威嚇され(あらら、昼間の人格はどこよ)絶対に返さない。
 人はあきれながらこの芝居に、毎夜つきあっている。

 ラグビーと暮らし、うれしく思うのは、家族の動物にたいする見方が変わり、思いやりもふかく、心にゆとりも生まれたこと。親犬と一か月でわかれ、教わらないのに犬としての暮らしが、厳然とあることにも感動した。

 以前見つけたエリック・サティの「犬のためのしまりのない前奏曲」 「犬のためのぶよぶよした本当の前奏曲」。可笑しいね、
でも、ちょっと聞いてみたい。
ラグビーのおかげで笑いが絶えない。心から感謝しておりますよ。
 ちょっとお疲れ 今日のうしろ姿 
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元気なんですが

2005-04-05 | 犬のブロンコ・ダン

 とうとう春がきて、同居人御難の日。

 保護者が電話で聞いている。
 「もう17ですし、だいぶ体力もね… まだ注射しなくちゃいけないでしょうか?」
『こちらは何とも言えません。規則ですから… 先生に相談したらいかがですか?』

  おい! あくびしてる場合じゃないよ 君のことだよ。どうする?
つぎに、かかりつけ医院に尋ねた。
 「18年目に入りましてね、元気なんですが、いつもうちの中だけで… 注射どうでしょうか。…かわいそうな気もしましてね」 とラグに目をくれる。
  寝ていた同居人は、だいぶ白くなった目をあけた。なんとなく力よわくみえる。
 
 いろいろ説明し、やがて  
  『もう受けなくてもいいと思いますよ』 やった!よかった… 
 喜ぶラグビー、スキップしてる。
   『…でも、5月に健康診断受けてくださいよ』

毎年はがきがくる。
 『成人病・糖尿病・高血圧・ガン・腎臓・肝臓病・・予防のお知らせ 年に一度 ぜひドック検診を!』
 ここまで読んで、とうぜん保護者のことかと思った。

 ○○動物病院!
 びっくりして、大笑いになった。
 ドッグ・ドックを受けたことはないが ラグビーはきょうも元気である。人なら100歳近い。頭はしっかりしている。耳がすこし遠く視力も落ちた、声は大きく食欲旺盛。自慢の嗅覚もこころもとないが文句ひとつ言わない。狂犬? 猫もおなじくらい大きいのがいる。にらまれて目をそらすのはラグビーだ。
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いとしき同居人

2005-03-09 | 犬のブロンコ・ダン

 トイ・マンチェスター・テリア 
 Iさん宅から、上着のポケットに入ってやってきた。手のひらにのるあいらしきサイズ。一晩だけ鳴いたが、すぐなれた。生後1ヶ月で親犬と離れ、習わないのに厳然と犬の暮らしがある。かしこいなぁ。家族全員とりこになった。

 いっしょに暮らして17年、ひとで言えば100歳近い。人のまつげくらいの毛は、黒いビロードのような光沢、声も大きく立派なガードマンぶりは今も変わらない。
 走る姿はサラブレッドのよう。
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