イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

浩二と小路

2007-05-02 20:33:54 | テレビ番組

NHKBS‐2、今週は豊作でして、今週は市川崑監督の金田一耕助シリーズも衛星映画劇場で放送していますね。できれば標準モードで録画して後から観たいのですが、ほとんど2時間超の長尺。テープの買い置きがない。パソコンはこの時間は使用中で、録画には使えない。

昨日は77年公開『獄門島』故・佐分利信さんの存在感が圧巻ですが、浅野ゆう子さんの付けボクロ白痴美メイク月代ちゃんも楽しいな。浅野さん的には10年後のトレンディ女優ブレイク前の不遇期でしたかね。白拍子の衣装を着ると長身に迫力があることあること。この当時は、女の子タレントがアイドル展開しようと思ったら、長身は絶対的に不利だった。何となく、長い四肢の持て余し具合が一時期の米倉涼子さんを連想させるふしもある。

アレこのヒゲ面の駐在さん誰だっけ?と思ったら、歌手の上條恒彦さんでした。リメイク版『氷点』など歌なし演技だけの役者さんとしても何度か見ていますが、ここに出ていたとは『木枯し紋次郎』主題歌『だれかが風の中で』つながりでの市川監督とのお付き合いでしょうか。

舞台が離島ということもあって、金田一が船で海を渡って来て、事件が終わってまた船で海を去って行く。次第に小さく遠ざかる島。金田一が来る前と来た後では、同じ島であって、中身は同じ島ではなくなっている。物語世界に隔絶感、アナザーワールド感があって、石坂浩二さん主演の金田一映画ではこの作品がいちばん好きです。横溝正史さんの代表作は、ほとんどがある意味“離島もの”なのですが。

24:00からは『怪奇大作戦セカンド・ファイル』2話『昭和幻燈小路』を、久々の待ち構えリアルタイム視聴。放送時間の前に夕食後片付けシャワー高齢家族のマッサージその他雑事、うわーっと一気呵成に処理してTVの前へ。昔、ビデオデッキがなかった頃はTVと言えばこうやって見るのが当たり前でしたね。久しぶりで何だか新鮮。

奇しくもこの日のエピソードは昭和ノスタルジーもの。6歳で死んでしまった愛娘を愛惜する老人の情念が、幻燈機による光刺戟で引き起こされる脳波に近似した異常電波を一区画の住民に共鳴させて、その小路一帯が昭和30年代の幻影ホログラフと化してしまう…という謎解き(だよね?)ですが、“主犯”である、死期の近い老人(和製クリストファー・ウォーケン清水綋治さん。昼ドラ派には『紅の紋章』)が、過去をこよなく愛し、娘がこの世にすでに亡いという現実を受け容れられずにはいるけれど、孤独な自分が暮らす現在の時代に強い憎悪を持っているわけではないので、昨日の1話とは違った意味で『怪奇』らしくない、『トワイライトゾーン』のようなダークファンタジーの中の、ダーク味の少ない1エピソード風の仕上がりになっていました。

いきなり40年以上前の空間に放り込まれた町の住人も、パニックに至らずアナログで素朴な当時の生活にすぐ順応し、大人は白黒街頭TVやレコードプレイヤーを楽しみ、子供はメンコ、パッチや紙芝居に熱中するなど、登場する人物すべて、あっけないほど悪意がなく性善説ワールド。巻き込まれてしまったSRIメンバー牧・三沢・野村の3人が逗留する旅館女将役で故・実相寺昭雄監督の奥さんである原知佐子さん(『偽りの花園』強烈キャラ三味線お婆ちゃま)が登場、「日本はこれからどんどん良くなると信じていた。いい時代でしたねぇ」と牧につぶやく場面など、ちょっと“昭和”を称揚し過ぎのような気もします。実際こんなことが起きたら、子供たちなんか「wiiやりたい」「ビッグマックが食べたい」と騒いでえらいことになると思うけど。

「ろくな時代じゃないかもしれないけど、オレはやっぱり元に(=現代に)戻りたいよ」と屋台で酒を飲みながら述懐する三沢や、若い野村に比べ、自分の幼い頃世を去ってしまった父への思いで過去へのシンパシーを強く持っている分、牧だけは老人の執念の対象である幼女の姿を見ることができ、彼女の姿を追ってすべての発信源である写真館と幻燈機にたどり着くことができました。

老人が路上で落として探していた亡き娘の形見の髪留めを、牧がすでに息絶え絶えの老人の手に握らせると、幻燈機にはその髪留めをつけた少女の笑顔が映し出され、唇が「あ・り・が・と・う」と動く。乾いた音とともに静かに止まる幻燈機、牧の頬をつたう涙、こと切れた老人の手から床に落ちる髪留め。

誰も誰かを傷つけようとなど思っていない。憎しみも怨嗟もない。現在の世界からは“突然姿が消えた”と思われていた住民たちは、異常電波の消滅とともに無傷で帰還します。

オリジナル『怪奇』の岸田森さんの牧は、あそこで涙したりしない(しても画面に映らない)キャラだったんだけどなぁ。昨日の1話といい、『セカンド』はオリジナルとは違う世界観で作られた作品と思ったほうがいいんでしょうね。的矢所長、さおりさん(小橋玲子さんの“さぁ坊”とは違って、美波さんのさおりは“ちゃん”付けはしにくい)、町田警部(寺田農さん。またまた昼ドラ派には『レッド』)のお揃いモジモジくん風防護服姿が見られたのは拾いもの。

すべてが終わったあと現代の街の雑踏に戻り「いまのこの世界のほうが、夢のように感じられる…」と独白する牧。こういう甘くホロ苦い後味のエピもいいですね。ジャック・フィニイの『ゲイルズバーグの春を愛す』などの一連の作品と一脈通じていると思う。

でもやっぱりコレ『怪奇大作戦』じゃないだろう(結局ソレかい)。

クールな外見にホットさや柔らかな感性を宿らせている西島秀俊さんの牧、不器用だが人の良さが滲み出ているココリコ田中直樹さんの三沢、いま風若者の頼りなさはあるけど実直で弟キャラな青山草太さんの野村など、オリジナルといちいち照合などしないで観れば、個々のキャラは演出も役者さんもいい味を出してきているので、3話も楽しみになりました。

コメント
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