家元の鶯谷麗さんに紹介されて、ステージに立ったのは、タキシード姿の院長先生だ。
譜面台に厚い楽譜を乗せて、ピアノ伴奏で歌いだしたのは「黒い瞳のナタリー」!
♪ ナタリィ エン ラ ジスタンシア ツ レクエルド ビバ ミ.....
メモを取れるほど正確な日本語で、朗々と歌い出した!
ここ、端唄の会なんですけど......。
先生の歌唱はフリオ・イグレシャスのような下品な媚が無く、ワグナー歌劇である。
楽譜どおり正確に声を出してはいるが、ちょいとテンポに難ありありあり。
また、字余り気味でもあるあるある。
だが、ナマピアニストが巧みにフォローして破綻は無い。
続いて、ラテンの名曲中の名曲、「ベッサ メ ムーチョ」である。
もっともっと愛して、である。サスってじゃないよ。
先生は拡声器の助けを借りて、会場が割れんばかりに絶唱した。
歌う前に、この歌はもう3000回は歌っている、と豪語された。
しかし先生、歌は注射と違って回数じゃ無い、と思いますが.......。
今までお行儀良く端歌を鑑賞していた市長閣下は、身を乗り出して拍手喝采雨霰だ。
家元さんは手を振っている。
聴衆は唖然呆然。
院長先生は、相当授業料払っていると思う。
市長閣下や家本さんが熱烈応援する謎が解けたような気がする。
早くからタキシ-ドを着ていたはずである。
でも、あんなにシワシワシミシミのご老体がお洒落して、ご機嫌で絶唱する。
誠に気持ちが良く、お金があれば老後にも希望がある、と嬉し楽しく口惜しかった。
夜は半分満足じゃ。
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