外から見ると、圧倒的な温室である。
切符売場から、美術館入口へ行く道は、流通センター裏口であり、中に入ると体育館だった。
「国立新美術館」は、地下鉄乃木坂駅6番出口が一番便利である。
ただ、よく見れば凝った造りだが、何かが足りない。白一色で仮設通路の感じがする。
地上に出て切符売場をとおり、裏口のような入口に到る通路はガラス屋根の下で、強烈な陽射しを遮るものは何も無く、ゆっくり歩いていたら干物になりそうだ。
美術館内部は、凡そ美術館らしくない薄っぺらな造りで、多分、前面の巨大に膨らむガラス壁に予算の大半を使ってしまったのではないか。
美術館としての使い勝手は良いのかも知れないが、あまりにも単調で味気が無い。設計の黒川紀章先生としては、自己顕示欲の塊となって、ガラス壁に精力を使い果たしてしまったのだろう。
出来たばかりは斬新な意匠が評判だが、あと20年もしたら、解体・改造工事が必要になる、と思う。大体、あの広大なガラス面は掃除が大変だし、冷暖房効率が悪い。国立だから済むものの、都立だったら、政敵慎太郎知事、黙っちゃいないはず。
公共的な建物は、外観の意匠だけ目立ってはマズイのだよ。
新美術館は収蔵品を持たず、企画展など貸し展覧会場らしい。つまり、博覧会かイベント会場というわけだ。それなら、1年で取り壊すのを前提にして造れば良かった。
なお、いいところは、展覧会会場以外は入館無料であること。
猛暑日や天気の悪い日、近所の人は、空調の効いた長い木製廊下広場でジョギングすればいい。
ところで、新美術館では有料の「日展100」の他に、無料の「書道展」と二つの「水墨画展」が開催中だった。
ひととおり、観たが、壁一杯に作品を取り付けて、まるで収蔵庫のようだった。いいも悪いもなにもあんなに並んだら......。
ただ、犬も歩けば収穫がある。
書道展の書の99%は読めないが、読めて、しかもなかなかの詩があった。
三好達治の作品です。題は......。書き留めるのを忘れました。
夏の祭りの海の上
祭りの樂は雲の間に
天使たちがそそくさと
しだらに脱いだ白い沓
鴎の群れはむきむきに
沖べの巌に動かない
彼らの仲間も陽に酔って
しばしは天上の夢を見る
夏の祭りの海の上
祭りの樂は雲の間に
そして、ステッドラー製「ルナ水彩色鉛筆スケッチセット」を衝動買いしてしまった。
熱い熱い、と言っても、夏が過ぎたら秋が来る。
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