ねぇ〜 親方! 親方ってば! 前のアルバム結構売れたって聞いてますけど、もしそうなら俺たちの給料もチョッピリ上げて貰うわけに行きませんかね?
そりゃまあ、このバンドは親方のギター捌きで成り立っているのは重々承知しているところではありますがね。
でも俺たちだって結構いい味出してるって思ってんですけどね。
もう少し色付けてくれれば有り難いんですけど。何しろもうすぐお正月ですから…
何ですって! 俺たちの要望に沿って頂けるってことですか?
親方、どうも有難うでござんす。パチパチパチ(拍手の音)
てな会話があったかどうかは定かではないが、1977年のヒット・アルバム、Moon Flowerに続いて翌年出たのが彼らの10枚目のスタジオアルバム、Inner Secrets。
それまでのラテン・フュージョン系の音楽志向だったのが、前作からシングル・カットされたゾンビーズのカバー、She's Not Thereがヒットした事で気を良くしたのか、プロデューサーに当時ソウル系のヒット・メーカーだったデニス・ランバートとブライアン・ポッターをプロデューサーに迎え、ソウル系のカバーにロック色を強め最後にサンタナ御大のラテン色溢れるギター・ソロを振りかける味付となった。
しかもシングル・ヒットを狙ってこのアルバムから計5枚のシングル、ダブりもあるが何と!全9曲中7曲がシングルのA/B面にそれぞれカップリングされ発売された。
残念ながら、商業的には前作の全米10位と比べると全米27位で大成功とは言えなかったのだが、全体的にスムーズな流れで非常に聴きやすいアルバムである。
この動きをサンタナとしては禁じ手と思ったそれまでのファンもいたかもしれないが、これはこれで良しだと思う。
いゃ〜 親方俺たちのために気を使っていただいて有難うございました。これで年が越せそうです。
なに!このことは口外しちゃダメって? ようがす。決して口外するような事はありゃしません。全員肚の中に納めておきやす。
何しろ、アルバム・タイトルがInner Secretsですからね。

