不思議の国のアリス・番外編
『アリスのアルバイト』
――週末にアルバイトせえへん?――
フランスに留学中の妹、アグネスから妙なメールが、慣れた大阪弁で届いた。
確かに、この週末は空いている。
――フランスから、バイトの勧誘するかあ?――
そう返事を送った。
――細かいことは言われへんけど、めったに無いバイト。ハッピー間違いなし!――
折り返し、返事が返ってきて、イエスかノーか答を迫ってきた。
ガキンチョのころから、イタズラしあってきた姉妹なので、とりあえず乗ってみることにした。
――ほんなら、金曜の晩11時にお迎えが来るよって、待ってるわな(^o^)!――
そして、金曜の夜。どうせ駄洒落のようなメールがきてお終いだと思ったので、パソコンの前で、待っていた。
いつになく、眠気がさしたアリスは、モニターの時間が10:59を指したところで眠ってしまった。
「アリス……アリス……迎えにきたよ」
密やかだけど、はっきりした声に、アリスはすぐに目覚めた。
お使いは、可愛いブルネットの女の子で、いわゆる女子用サンタのナリをしていた。顔つきはハリポタのハーマイオニーの初期に似ていて、胸なんかアリスの1/3……は言いすぎだけど、アリスのコンプレックスを刺激しない程度の大きさしかなかった。そして、なにより気に入ったのは、その子が大阪弁でしゃべるところだった。どこからどう見ても日本人なんかじゃないんだけど、アリスに負けないくらいの大阪弁である。
「あ、いま着替えるさかい……」
「なに言うてんのん、あんた、もう用意でけてるよ」
気づくと、アリスは、いつのまにか、その子と同じ女子用サンタのナリになっていた。
「うわあ、いつの間ぁに?」
「アリスが、その気になってくれたときからや」
パパもママも眠っているのか、気配がしない。
通りに出ると、トナカイに繋がれたソリが待っていた。
「ほんなら、行くよ!」
サンタ娘が声を掛けると、トナカイはゆっくりと夜空にソリをひき始めた。
「アリス、どこ行くねんな?」
お隣のタナカさんのバアチャンが、声を掛けた。
「ちょっと、アルバイト~!」
「不思議やね、並の人間には、うちらのこと見えへんはずやのに……」
「あの、オバアチャンは……半分魔女みたいなもんやさかい」
「ハハ、東洋の魔女やね」
次に意識が戻ったのは、妹のアグネスが居るフランスの街の上空だった。街はクリスマスの飾り付けやイルミネーションでいっぱいだった。おかげで、だれにも気づかれずに街一番の教会の裏から地下に入れた。
「いや、ほんま助かるわ。そこのAの3065のベッドで寝てくれるか?」
サンタクロースから、いきなり言われた。
「あ……寝てて、なにしますのん?」
「寝てるだけ」
「え……?」
サンタは、質問にも答えず、忙しそうに行ってしまった。
「まあ、とにかく寝てたら分かるよって」
サンタ娘まで、どこかに行ってしまった。
気づくと、隣のベッドで妹のアグネスが幸せそうな顔で眠っていた。
「しゃあないなあ……」
横になると、アリスも直ぐに眠ってしまった。で、分かった……。
プレゼントは、無限にあった。カタチのあるものだけじゃなく、希望の学校に行けるや、別居しているお母さんと会えるという、カタチにならないものまであった。
そのプレゼントを仕分けて、発送できるようにするために、優しく人を思う心がエネルギーとして必要なんだ。
そして、なぜサンタの配送センターがこの街にあるのかも分かった。
この街は、クレルモン・ヘラン……くれるもん減らん……だから。
分からない人は、無理に分かろうとしないほうがいいようだ。
『アリスのアルバイト』
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――週末にアルバイトせえへん?――
フランスに留学中の妹、アグネスから妙なメールが、慣れた大阪弁で届いた。
確かに、この週末は空いている。
――フランスから、バイトの勧誘するかあ?――
そう返事を送った。
――細かいことは言われへんけど、めったに無いバイト。ハッピー間違いなし!――
折り返し、返事が返ってきて、イエスかノーか答を迫ってきた。
ガキンチョのころから、イタズラしあってきた姉妹なので、とりあえず乗ってみることにした。
――ほんなら、金曜の晩11時にお迎えが来るよって、待ってるわな(^o^)!――
そして、金曜の夜。どうせ駄洒落のようなメールがきてお終いだと思ったので、パソコンの前で、待っていた。
いつになく、眠気がさしたアリスは、モニターの時間が10:59を指したところで眠ってしまった。
「アリス……アリス……迎えにきたよ」
密やかだけど、はっきりした声に、アリスはすぐに目覚めた。
お使いは、可愛いブルネットの女の子で、いわゆる女子用サンタのナリをしていた。顔つきはハリポタのハーマイオニーの初期に似ていて、胸なんかアリスの1/3……は言いすぎだけど、アリスのコンプレックスを刺激しない程度の大きさしかなかった。そして、なにより気に入ったのは、その子が大阪弁でしゃべるところだった。どこからどう見ても日本人なんかじゃないんだけど、アリスに負けないくらいの大阪弁である。
「あ、いま着替えるさかい……」
「なに言うてんのん、あんた、もう用意でけてるよ」
気づくと、アリスは、いつのまにか、その子と同じ女子用サンタのナリになっていた。
「うわあ、いつの間ぁに?」
「アリスが、その気になってくれたときからや」
パパもママも眠っているのか、気配がしない。
通りに出ると、トナカイに繋がれたソリが待っていた。
「ほんなら、行くよ!」
サンタ娘が声を掛けると、トナカイはゆっくりと夜空にソリをひき始めた。
「アリス、どこ行くねんな?」
お隣のタナカさんのバアチャンが、声を掛けた。
「ちょっと、アルバイト~!」
「不思議やね、並の人間には、うちらのこと見えへんはずやのに……」
「あの、オバアチャンは……半分魔女みたいなもんやさかい」
「ハハ、東洋の魔女やね」
次に意識が戻ったのは、妹のアグネスが居るフランスの街の上空だった。街はクリスマスの飾り付けやイルミネーションでいっぱいだった。おかげで、だれにも気づかれずに街一番の教会の裏から地下に入れた。
「いや、ほんま助かるわ。そこのAの3065のベッドで寝てくれるか?」
サンタクロースから、いきなり言われた。
「あ……寝てて、なにしますのん?」
「寝てるだけ」
「え……?」
サンタは、質問にも答えず、忙しそうに行ってしまった。
「まあ、とにかく寝てたら分かるよって」
サンタ娘まで、どこかに行ってしまった。
気づくと、隣のベッドで妹のアグネスが幸せそうな顔で眠っていた。
「しゃあないなあ……」
横になると、アリスも直ぐに眠ってしまった。で、分かった……。
プレゼントは、無限にあった。カタチのあるものだけじゃなく、希望の学校に行けるや、別居しているお母さんと会えるという、カタチにならないものまであった。
そのプレゼントを仕分けて、発送できるようにするために、優しく人を思う心がエネルギーとして必要なんだ。
そして、なぜサンタの配送センターがこの街にあるのかも分かった。
この街は、クレルモン・ヘラン……くれるもん減らん……だから。
分からない人は、無理に分かろうとしないほうがいいようだ。