大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・あすかのマンダラ池奮戦記・7『あすか賢くなる!』

2016-10-25 07:00:49 | 小説5
あすかのマンダラ池奮戦記・7
『あすか賢くなる!』
         



「で、名前は? 依代をしながら意識が醒めているなんて、ただ者じゃないわ」

 意地悪そうな笑みを浮かべて、フチスミ……いや依代を見つめるイケスミであった……。

「桔梗、天児桔梗(あまがつききょう)」
「天児……!」
「ア、アマガツ……?」
「天国の天に鹿児島の児と書くんだ。伴部村の神社の子だね?」
「社は二十年前の台風で倒れて、それっきりだけど、この子のお父さんが、映画のセットみたいな代用品を建てて細々とやっていた。でも……そのお父さんの神主さんも、今度の地震で……」
「他に家族は……?」
「天涯孤独……一人ぼっちって意味さ」
「どうして、イケスミさんにわかるの?」
「その桔梗って子、身を投げにきたんだね、フチスミさんの花ケ淵に……」
「よくわかったわね……二人だけの秘密だったのに」
「イケスミだよあたしは。意識が起きてさえいりゃあ、なんだってお見通し。依代になりながら起きているなんて、天児の子とは言え、本当は強くて賢い子なんだね」
「……繊細で賢い子。だから、新しい町や学校にもなじまず、死のうと思った」
「あの……繊細で賢い子だと、どうして、なじめずに死のうと思っちゃったりするわけ?」
「だって、あんたはなじんでるでしょ、町にも学校にも?」
「うん、あたしは バカでガサツで弱虫なわりにお調子者で……」
「でしょ。万代池が無くなるのに死のうなんて思わないしさ……」
「ちょ、ちょっと!」
「ごめん、ちょっとひがんでみただけ……」
「桔梗は、このあたりでただ一人わたしの依代になれる素質を持った子だった」
「ソフトとハードの関係だね。あたしとイカスミさんみたいに」
「イケスミだっつーの」
「その桔梗が、廃村の二日後、たった一人でわたしのところへやってきた。これは運命だと思った。この子もね……二人でそう感じた時、わたしは溺れているこの子にのり移っていた……その時……」
「その時?」
「かすかにオオガミさまの声が聞こえたような気がした……」
「はるか出雲から、オオガミさまの声が……」
「見とどけよ……とおっしゃった」
「何を見とどけよと?」
「おもどりになるまでのこと、それしかないわ」
「でも、もう十一月も末だよ」
「どういう意味だ?」
「……もう帰ってこないんじゃ……だって何もかも水の中に沈んでしまって、変な不良の神さまたちもここをねらってるみたいだし……」

 バサバサっと鳥たちが怯えて飛び去ったあと、ドドーンと彼方で崩れる音。怯えるあすか。

「神さまは嘘は言わない」
「でも、もどってくるとは言ってないんでしょ。出雲に行ってくるとだけ、そしてかすかに、見とどけよと、そう言っただけでしょ?」
「神無月を過ぎて、神々がもどられなかったことなどない!」
「だって、まだもどってこないじゃないか!」
「それは……」
 答えに窮するイケスミ。
「先生だって、トイレにたったきり職員会議にもどらない人がいる。生徒の大事な進路を決める職員会議にだよ!」
「教師ごときと神さまをいっしょにするな! 神さまを信じろ!」
「だって、イカスミさんだって、マンダラ池を見捨てたじゃないか、二度ともどってきやしないんじゃないか!」
「勝手なことを申すな!!」

 両手をつかって気をとばすイケスミ、数メートルふっとび、地面に体を打ちつけられるあすか。

「……イカスミ!」
「あたしの名はイケスミだ、二度とまちがえるな」
「この子は恐ろしいんだ、いろんなことが……もうもどしてやった方がいい。そんな顔してると禍つ神になってしまうわよ」
「……そうだ、そうだったな。ここまで連れてくるだけの約束を、ついひっぱり過ぎたな。すまんあすか……ほら、約束の成績票」
「あ、ありがとう……!?」
「どうかした?」
「オ、オール5だ……あたし、こんなには賢くないよ」
「あすかの頭も、それにあわせてよくなっているわよ」
「ほんと?」
「フチスミさん、なんか問題言ってやって」
「うーん……じゃ、微分方程式ってなーんだ?」
「未知関数の導関数を含んだ方程式。未知関数が一変数のとき、常微分方程式といい、多変数のとき偏微分方程式という……え?」
「和文英訳『日本語のおはようは、英語のグッドモーニングと同じです』くりかえそうか?」
「ううん『オハヨウ イズ ジャパニーズイクォリティー トウ ジイングリッシュグッドモーニング』……おお!?」
「古文法、推量の「ら」を用いた著名な和歌は?」
「春すぎて~夏きたるらし白妙の~衣干したり~天の香具山……万葉集巻一、持統天皇の御製。ちなみに持統天皇、名はタマノハラノヒメ、またはウノノサララ、天智天皇の第二皇女で天武天皇の皇后、草壁皇子没後即位、第四十一代の女帝。ちなみに神田うのの「うの」は、このウノノサララからきている……すっげえ!」
「な、賢くなったろう」
「ありがとう、頭の中に百万個電気がついたみたい」
「ちょっと甘すぎない?」
「同じ学校受けられる水準にはしといてやらないとな、真田ってイケメンと」
「ああ、それないしょ、ないしょ!」
「アハハハ……そうだったわね」
「え……?」
「神さまに内緒は通じないからな」
「がんばってね」
「もう……!」
「それから、その成績票、破いたり傷つけたりするなよ」
「うん!」
「元のバカにもどっちまうからな」
「元のあすかちゃんも悪くないわよ」
「もう、フチスミさんたら」
「……南東のケモノ道はまだ無事。まだ日が高いから、少し教えてあげれば一時間で轟って街につく」
「トドロキ……」
「このへんにしては大きな街だからすぐに、駅が見つかる。特急に乗れば一時間ちょっとで東京。ほれ、電車賃……バカ透かすんじゃない本物。木の葉なんかじゃないからね」
「南の方はまだ息をひそめているけど、北の禍つ神達が雑魚のように群れはじめている。その藪の中に武器が隠してある。間に合わないときは、それで始めといて。さ行こうあすか、こっちよ」
「うん、ありがとう、じゃ、イケスミさんも無事でね! 死んじゃやだよ……!」

 あすか、フチスミにいざなわれトドロキへの道へ、強まるアヤカシの気配……。



※このお話は、もともと戯曲です。実演の動画は下記のURLをコピーして貼り付けてユーチューブでご覧ください。

 http://youtu.be/b7_aVzYIZ7I

※戯曲は、下記のアドレスで、どうぞ。

 前半: blog.goo.ne.jp/ryonryon_001/.../2bd8f1bd52aa0113d74dd35562492d7d‎

 後半: blog.goo.ne.jp/ryonryon_001/e/5229ae2fb5774ee8842297c52079c1dd‎
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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評・73『モック・バスター……?』

2016-10-25 06:46:45 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評・73
『モック・バスター……?』


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ

今週は映画無しデス。

 それで“モック・バスター……一体何の事だとお思いでしょうか(ウ゛ァイオリン弾きの森繁風に…)
 MOCK(模倣する)+BLOCK BUSTER(超大作映画)=MOCK BUSTER……要するにパクリ映画の事です。
 レンタルビデオ屋で、こんな経験ありませんか?「アバター」の隣に「アバター オブ マーズ」、「トランスフォーマー」の隣に「トランスモーファー」、続編は無いはずなのに「タイタニックⅡ」~~なぁんてな限りなく怪しいタイトルを発見した事はありませんか? これらは総て“ASYLUM”(精神科病院)という会社の作った低予算SF作品、どこかで闇製作してるのかと思いきや、立派にハリウッドのディズニースタジオの北東に鎮座しています。
 MOCK BUSTERはASYLUMの専売特許ではなく、インディーズ系には、この類いの映画を作っている所が幾つか有ります(ツインヘッドジョーズとか砂浜を移動するジョーズやら)

 昔から、B・C・D・F級映画ってのは沢山有りました。「デスペラード」なんてな映画も、元はR・ロドリゲスが7000$で作った「エル・マリアッチ」のハリウッド・リメークです。B級の帝王 R・コーマンは確信犯的低予算、早撮り、二番煎じ。エド・ウッドなんてな怪人監督もいました。
 インディーズに限らず、パクリはメジャー系でも花盛り、企画の盗り合いなんてな日常チャメシです。「アルマゲドン」の企画を先取りして低予算、早撮りで作ったのが「ディープインパクト」なぁんてな有名な例もございます。
 アメリカは知的財産権にうるさい国ですから、企画のパクリには厳しいんじゃないか…と思っていたのですが、ところが意外や、殆ど笑ってスルーするみたいです。過去には訴訟もあったようですが、立証が難しく、必ずしも勝訴出来ない事例が多くて、訴訟するよりは逆手にとってCMに使ってしまえ……位の感覚のようです。
 ASYLUMの設立メンバーも、元はインディーズでアート作品を撮っていたようですが、大手ビデオチェーンとの出会いから、徹底的マーケティングによる「売れる企画」の低予算(スタートは一本3万$、大体10-20万$、メジャーは1000万$)早撮り(2-3週間撮影、月1本製作、95年設立後15年で100本製作、メジャーは年2-3本)企画から製作から配給まで自社内で完結させる…というスタイルに変更、会社経営維持の不安定なハリウッドにあって低レベルではありながら(年間売上高600万$)安定した経営をしているようです。
 パチモンと知りながら、怖いモノ見たさで、ついつい手に取る……結構こういう人が多いようで、こんな人間心理にもはまるようです。バカにしつつも、ツボにはまると、つい見込んでしまう作品もたま~にあったりして、こういうのがカルトムービーに成ってしまったりするのです。
 ASYLUMの成功(?)で、インディーズに同様の会社が増えたのは事実ですが、映画界のニッチ産業という立場と共に、映画人の初期養成所としての役割も果たしているようです、全社一丸で早撮り、スピード製作のタフな現場ですから、VFXなんてな専門職以外はなんでもやらされる、ものの2-3ヵ月もしたら一丁前の職人に見える(?)ようにはなるらしい。思えばR・コーマンの足下からコッポラやキャメロンなんてな監督や、J・ニコルソン、P・フォンダなんかが育っている。メガ・シャーク vs ジャイアントオクトパス(ゴールデンゲートブリッジを噛み砕くほどデカいサメ)なんてな映画のネット予告編は、かの「アバター」の予告編に次ぐ再生回数だそうです。安っぽい作品ながら勢いで見せきる! チープ作品の系譜は決して無くならず、今後も映画界に居座り続ける事でしょう。中には、あまりにも馬鹿馬鹿しく、時間の無駄に思える作品も有るでしょう(その方が多いやろね) でもまぁ、そうと知りつつ、怖いモノ見たさで選んだのなら「馬鹿だね~、こんなん作ってええんかい?」てな、おおらかなる気持ちで笑い飛ばしてやって下さい。
 世の中には、Aクラスを名乗りながら、見ていて怒りに震える作品もあります。本物の詐欺作品(?)ってのはそういう映画です。そういう映画に当たったら、それこそ大声で「金返せ~!!」と叫びましょう。
 誰しも過去に1-2本はB級カルトがあるでしょう。あなたのカルトは何ですか。まさか…ディバイン(アメリカのデラックスマツコ的オカマ、徹底的グロ・ゲロ)などと答えるあなた……B級ファンと言うより、変態でっせ!!〓

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