希望ヶ丘青春高校有頂天演劇部の鉄火場⑥
なんかね~梅雨が近いせいかなあ
うちは公立なんで、決まりがうるさくって、ようやく昨日から冷房が入ったの。
で、この生暖かいアンニュイは、どこかへ行くと思ってたのね。それが今日になっても生ぬるいまんまなのよ。
教科書ひらいて、板書もちゃんととって、先生の説明ってか授業もちゃんと聞いてるんだけど、なんか古いフランスのからくり人形のオートマタにでもなった気分。
オートマタ分かんないかな……等身大の人形でね、ネジ巻いとくと、人間みたいに本当にノートに字ぃ書くの。インクがかすれてきたら、ちゃんと自分でインク壺に羽根ペンつけて、インクの補充までやんの。教室見渡してると、このオートマタ以下ってのが何人かいる。教科や時間帯によっても違うんだけどね。シャーペン持ったまま寝てる子とか、大胆なやつは、机にしがみつくようにして寝てんだもんね。うちの学校は厳しいから寝てたら起こされるんだけど、5時間目とか体育のあとなんか最悪。先生は授業やってんだか起こしに回ってんだか分かんなくなる。オートマタならネジ巻きゃいいんだけど、人間のネジってどこにあるか分かんないもんね。
シャレっぽく言ってるけど、オートマタ以下の人間てどーよ。
でオートマタ以下の人間起こしまくってる先生って虚しいと思う
正直、こんな学校だとは思わなかった。
なんか希望ヶ丘青春高校って看板が空々しく思えてくる。
これが、希望……? これが青春……?
で、考えてみた。
というか三好部長の言う通り観察してみた。
いろんな答えが頭に浮かんできたんだけど、全部書いてらんないから、一番と思われるの書きます。
先生が、授業下手すぎ。生徒を観客に例えれば、先生は役者だよね。
芝居って、厳密には劇場だけでやるもんじゃない。島田 正吾さんていう新国劇の名優さんは、晩年はマンションのリビングやお座敷で、「シラノ・ド・ベルジュラック」を翻案した「白根弁十郎」を演っていた。だから、先生は38人の観客相手に50分の芝居演ってるのと同じなんだと思う。
スタニスラフスキーってモスクワ芸術座の偉い人が言ってた。
「つまらない役なんてないんだ。つまらない役者がいるだけ」だって。
日本の大学の教員養成課程は昔よりはシビアになってきたらしいけど、決定的に欠けているのは人にどう伝えるかというスキルを教えないこと。欧米じゃディベートや演劇を教職課程の中に組み込んでる大学があるくらい。
先生だけじゃないけど、人に伝えるスキルを日本人も学ばなきゃと思った。
放課後の部活で、由利鎌之先輩に聞いた。
由利先輩は二つ前のブログを書いてるから分かると思うんだけど、性別不明。うちはスカート穿いてるからと言って女子とは限らない学校なんだけど、由利さんは本当に分からない。
あたしは中学でも演劇部だったから、男がどんなに女に化けても見破る自信あるんだけど。例えば足の組み方、女性は股関節が男と違うんで足を組んで、さらに足首でももっかい組める。由利さんは、これが出来る。でも受けるオーラは、時に男以上に男らしい。
その由利先輩に聞いたら、明るく笑われちゃった。
「授業がつまらないのは当たり前。先生が下手に思えるのも当たり前。なんでつまらないか分析しなくちゃ演劇部じゃない。つまらない授業の観察しっかりやって、再現できるとこまでやってごらん。甚八が先生の声色使って女の先生口説いたぐらいにね」
我ながら、すごい演劇部に入ったもんだと思います。
三好部長からは、真面目すぎてつまらないブログだと言われました。勉強します。
演技組 望月六女(もちづきろくな)