小説大阪の高校演劇・4
『また、ブリジストンめが!』
またブリジストンが……!!
性懲りもなく五年前のコンクールの審査にケチをつけとる。許せん奴や!
五年前のコンクールでブリジストン(石橋幸平)の本が選外になったのを恨んで、未だに連合にケチをつけとる。
ネカマになって、匿名でコメントを書く。ボキャ貧なんで書くのに二時間もかかってしもた。そやけど書き終ってエンターキーを押すと、ちょっと胸がスッキリ。気が付くと午前5時過ぎ。オレの昼夜逆転も、来るとこまできたかなあ。またオカンの嫌味やなあ。
ブリジストンは合同合評会で、審査にケチをつけよった。合評会いうのは、みんなの苦労を労って、明日への活力にする場や。それをブリジストンはワヤクソにしてしまいよった。
――審査内容と審査のレジメの内容が異なるのは審査の放棄!――
なに言うとんねん。審査員は気の優しい人で、せめてレジメで慰めよいう気持ちが分からんのか!?
だいたい合評会いうのは(ここで辞書をひく)……何人かの人が集まって、ある作品・問題などについて批評し合うこと……?
批評……事物の価値を判断し論じること。「批評」は良い点も悪い点も同じように指摘し、客観的に論じること……?
むむ……ブリジストンは悪い点を指摘しとった。ほんなら、ブリジストンの発言を制止したR高校の先生の方が間違うてる?
わけ分からんようになってきた。
「作品に血が通っていない、思考回路、行動原理が高校生のそれではない」確かに、レジメからはスッポリ抜けてる。
いや、せやから、これは審査員の優しさで……。
「帰りの電車の中で、あの学校にもなんらかの賞をあげるべきだったと思った」
な、これは審査員の優しさやねんて!
オレは、自信を持つために優子にメールした。あいつも昼夜逆転やから、まだ起きてるやろ。
優子の返事はすぐに返ってきた。
――そんなこと言われたら、絶対ムカつく。審査員殺したろかと思う!――
え、ええ?
――これて、ブリジストンの芝居のことやで――
と、打ち返す。
――まだ、そんな古いこと言うてんのん?――
――オレとちゃう。ブリジストンがブログで書いとんねん!――
――あのオッサンのことは、シカトするて先生らも、みんなも言うてたやないの――
――せやかて、あいつのおかげで、恒例の全国大会のバスツアーも無くなってしもたやんけ。忘れたんか!?――
――ああ、あれ。もうええねん――
――なんでやねん!?――
――悪いけど、あれ流れたからHと付き合いはじめてん。ほんなら、もう寝るさかい。ばいばい――
それっきり、優子は電源落としやがった。
なんのことはない、ブリジストンおちょくったために……優子の気持ちが離れてんのを確認しただけや。
と思うたら、優子からメール。
――たまには学校行きや。大学五年生はハズイで――