大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・希望ヶ丘青春高校有頂天演劇部の鉄火場②来るこたねーのによ!

2018-06-01 06:48:18 | 青春高校

希望ヶ丘青春高校有頂天演劇部の鉄火場② 
来るこたねーのによ!
 



 昨年度巳地区審査員ナニガシ御来校

 ナニガシって名前じゃござんせん。ちゃんと親から頂戴された名前をお持ちの立派な先生で御座います。ご当人は名前がむつかしく、世間様が読めないとお思いになって、平仮名で通しておいでです。この手のお方にはロクな御仁がおられません。わたしが例外と認めているつかこうへい様でさえ「恥多き人生でした」と仰って逝かれました。
 え、つかこうへいを御存じない……「初級革命講座飛龍伝」ぐらいお読みになって、おとといお出でくださいまし。

 この御仁は、昨年のコンクール予選で、わっちらの芝居をこともなげに「本が書けていない」の一言で選外の「優秀賞」に蹴落とし、誰が見ても意味不明、かつ台詞が聞こえず、幕が下りても誰一人「え、これでお仕舞!?」と首を捻った某校を最優秀にしたご当人で御座います。
 
 台詞が聞こえないのを「心の叫びが伝わっていた」と評されていました。

 役者同士台詞が通じていない、従って、とてもつまらない芝居でござんした。でもナニガシさんは「伝わらないところが、主人公の孤独感・孤立感を良く表していた!」と激賞され、サプライズの審査をなさいました。
 まさに義経公鵯越の逆落とし、信長公の桶狭間の奇襲もかくやあらんの審査でございました。

 役として通じない設定ならば、そこに通じないことで起こる葛藤やリアクションがなければなりません。某校は、本当に相手役の台詞を聞いていなかったので御座います。

「退屈な役など存在しない。存在するのは退屈な俳優だけだ」

 近代演劇の基礎の基礎、スタニスラフスキーの『俳優修業』も御存じではないご様子でした。
 しかし腐っても鯛、誤審をしても審査員。不肖わたくし穴山小子(あなやましょうこ)が、茶道部の茶室を借りてお相手させていただきました。部長の三好や、猿飛佐子、霧陰才子などが同席すれば血の雨が降ることは必定。有頂天演劇部で……わっちから申すのも照れやすが、裏表千家師範、かつ朋輩の中でいっとう手弱女なわっちが、お相手した次第。他意はござんせん。

 どうもナニガシ様のお言葉の端々に、手前どもが始めましたブログのことをお気になさっておられるご様子。

 ここまで、ビビっておられるのを御無事にお返ししては、後生に障ります。
「用意が整いましたので、いざ、道場の方へ」
 由利鎌代が、ことを察し、柔道部の道場を借りてまいりました。

 ツワモノの道は不調法なわっちではござんすが、並の講道館柔道の三段、ナニガシ様のお召し物を崩さぬよう、大外刈り一本で決めさせていただきました。むろん元審査員のご体面のため、あばらの二本ばかりにヒビを入れさせてもらいました。これで男の向う傷と、多少はご体面が叶いましたことでありんしょう。

                         演技組 穴山小子(あなやましょうこ)


 連盟の年間計画

 ブログの埋め草に、連盟の年間計画を掲載している演劇部がありますが、有頂天演劇部は、そんなことはいたしません。連盟で検索すれば直ぐに出てきます。
 年間計画を転載するならば、そこには論評がなければいけません。新聞でも論評抜きで政府見解を載せているようなところはありません。で、有頂天としては論評する気もないので、載せません。

 追記:いやはや、年間計画どころか加盟校一覧も載っていない連盟もあるとか。知らぬこととはいえ失礼しました。

                        道具その他組  海野六子

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高校ライトノベル・『メタモルフォーゼ・19』 

2018-06-01 06:32:42 | 小説3

高校ライトノベル
『メタモルフォーゼ・19』
        


 年が明けた成人式の日、メンバー最年長の堀部八重さんが卒業した。

 突然の卒業宣言に驚いたが、八重さんの卒業の言葉で、あたしの人生が変わった。

「KGR46も、もう八年目になります。わたしは二十歳で第一期生になり、もう、今年の春には二十八になります。古いといわれるかもしれませんが、KGRとして、みなさんに夢をお届けするには、少し歳をとってしまったかな……メンバーもそれなりに歳を重ねて、少し大人びた表現をすることも多くなってきました。あ、みんながババアになったって意味じゃありませんので、怒るなよミミナ(KGRのリーダー)ミミナは永遠の少女だよ……て言ったら、今度は泣くだろ。勘弁してよ。わたしは、次のステップにすすみます。一人のアーティストとしてがんばります……で、わたしの後釜のポジションを指名していきます。あとは、チームRの渡辺美優にまかせたいと思います!」

 一瞬の静寂の後、会場いっぱいの拍手。

 あたしは実感のないまま、メンバーに背中を押されて八重さんと並んだ。
「美優は、わたしが見込んだんだから、しっかり頼むわよ!」
 そういってハグされてやっと八重さんと、そのポジションの重さ。そして、あたしに託された思いが伝わって、涙が溢れてきた。

 あたしは、この数ヶ月で、進二?(だったと思う)から、美優という演劇部の女子高生になり、県の中央大会で、最優秀をとり、KGRのオーディションに受かってしまい、とうとう八重さんの後釜に指名された。まるでおとぎ話。

 高校演劇の関東大会は、急遽武道館に会場が変更された。予定していたS県のホールでは観客が収まらないからだ。
 予選のときは、ただの女子部員だったけど、今は、KGRの選抜メンバーだ。で、実行委員長の先生から、こう言われた。
「悪いけど、渡辺さんはプロなので、審査対象から外します」
「は……それは、仕方ないことですね」
「で、君の受売高校の作品は『ダウンロ-ド』……一人芝居だ。で、上演作品そのものを外さなければならない、分かってくれるね。受売の替わりには県で優秀賞をとったM高校に出てもらう」

 承知せざるを得なかった。

 最初と終わりにKGRの選抜メンバーによるパフォーマンスをやった。そうしないと、観客の九割が受売高校だけを見て帰ってしまうからだ。
 会場費は放送局が負担した。そのかわり放映権を獲得し、半分以上あたしの『ダウンロード』に尺を費やした。事実上の渡辺美優の『ダウンロード』と、KGRのコンサートみたいなものになった。 なんだか申し訳ない気がしたが、運営の先生方も気を遣ってくださり、貢献賞という例年にない賞を臨時に作ってくださった。

 そして……それが事実上の高校生活の終わりになった。

 県立の受売高校では、とても必要な出席日数をこなせず。三年からは芸能人が多く通うH高校に転校して、芸能活動との両立をはかった。
「オレのことなんか、直ぐに忘れてしまうかもしれないけど……これ、受け取ってくれ」
 健介が、制服の第二ボタンを外して、あたしにくれた。あたしはカバンで隠してそれを受け取った。どこでスクープされるか分からないからだ。

 健介は、いろいろ芸能記者や、週刊誌の記者にきかれたようだけど、第二ボタンの件も含め、ネタになりそうなことは、いっさい喋らなかった。

 あたしのKGRの活動は、八重さんと同じ二十八才まで続け、卒業した。

 卒業し、ピンでの仕事も順調だった。二十九で大河ドラマの主役もやり、主演映画を含め四本の映画に出て、どうやら、女優として生きていくんだ。そう自覚したときガンになった。脳腫瘍と言った方がいいかもしれない。

 二年間治療しながら、仕事もこなした。

 そして、最後の瞬間、あの声が聞こえた。

「あなたは、二人分の人生と、その運命を背負っているの。進二と美優。だから、人生を半分ずつにした。どちらか一人にしても、あなたの寿命はここまで。よくがんばったわね」

――そうだったんだ……――

 そのあと、もう一言、そう思って途絶えてしまった……。

 メタモルフォーゼ……完

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