大橋むつおのブログ

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不思議の国のアリス・9『アリスのミッション・敢闘編』

2020-01-22 06:43:33 | 不思議の国のアリス
不思議の国のアリス・9
『アリスのミッション・敢闘編』    


 
 その日のうちにアリスは次の手を打った。

 アリスは、交換留学生である立場を利用した。
「東クン、ごめん。うちシカゴに帰ったらレポート書かならあかんねん。それで、ちょっとアンケートに協力してくれへん?」
「うん、ええで。そうか、アリスも、もう半年たつねんなあ……で、どんなアンケート?」
「いまから、ウチが、いろんな単語言うさかいに、思いついた言葉をすぐ言うて。たとえば、阪神……」
「タイガース!」
「うん、その調子。分からへんときは無理せんでええけど、なるべく言葉で答えてね」
「うん」
「ほな、いくよ……校長先生」
「タヌキ」
「地下鉄」
「通学手段」
「AKB48」
「高橋みなみ」
「前田敦子」
「キンタロー」
「アリス」
「不思議の国」
「ああ、ウチのこというて欲しかったなあ」
「あ、ごめん」
「ええよ、好きな女の子は、ほかにおるんやろさかい」
 ……と、暗示をかけておいて、その中に、クラスの子の名前をいくつか混ぜておいた。
「大杉」
「照れ屋」
「千代子」
「え……アリスのホームステイ先」
 
 ヒットした。

 千代子の名前を言ったとたん、それまでスムーズだった答えがつまった。
 で、答を言う前に、目が逃げた。これは、人間がウソ、または意識的に無関係な答を言う証拠である。アリスは、シカゴの高校の選択授業で心理学をとっている。その時に教えてもらったメソードである。これにひっかからないのは、このメソードにかなり慣れた人間か、特殊訓練を受けた……そう、あのカーネル伯父さんぐらいのものである。
 あと、いくつか無関係な質問をしたあと、念押しをした。
「渡辺(千代子の苗字)」
「え……マユユ」また、目が逃げた!
「恋人」
「募集中」
 日本人のステレオタイプの答え。ごていねいに、ほんのり赤くなっている。
 そのあと、メアドの交換をやった。
 
 目的は果たしたんだけど、東クン一人だけではワザとらしいので、教室に居た八人全てに聞かなければならなかった。まあ、こういうリサーチは苦手じゃないし、ほとんど遊び感覚でできた。
 ただ、その中に、アリスに好意を寄せる大杉が混じっていたことがモヤっとだった。

 アリスは、伯父のカーネル・サンダースに電話した。
 
 二日後に元国務長官のヒラリ・クリキントンが大阪に来て講演をすることになっていた。伯父は、その警備計画の打ち合わせもあって、先日大阪にやってきたのだ。アリスは、高校生を十人ほど加えてくれるように頼んだ。
「あ、それから伯父さん。伯父さんの名前で14日、帝都ホテル予約していいかなあ……ち、ちがうよ。あたしじゃなくて、友だちなんだってば! もう、ウソだと思うんなら、領事館のポリグラフにでもかけてよ!」

 アリスの敢闘精神は、涙ぐましくも、いかんなく発揮されていた……。
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