大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

RE・トモコパラドクス・84『ドッコイショ』

2023-11-20 09:22:33 | 小説7

RE・友子パラドクス

84『ドッコイショ』 

 

 

 もう一度T町にテレポする。

 テレポの瞬間、小さく「ドッコイショ」と掛け声が出てしまう。
 

 そして……発見した。

 

 二人のミイラ化した遺体だった。肉屋の冷凍庫に入れられていたので、空気中の臭い粒子はごく微量で、しかも拡散していたので、発見に時間がかかった。

「ひどい……まだ十代の女の子よ」

「勘が鋭いというだけで殺されたんだな、居場所を感知させないためだけに。奴も焦っているんだろう。ここに隠すまでに迷っている。だから臭いの粒子が飛び散ったんだ」

「また、カッパドキア……」

「少し休もう、力を使いすぎてる」

「でも、ほとんど追い詰めてる気がする。時間を置くと、司教も対策を立ててくる」

「奴も、それほどの力は残っていないと思う。聖骸布が完全ならともかく、トモちゃんに尻尾を掴まれているんだからな」

 友子は聖骸布の端を千切り取ったことを思い出す。まさに尻尾を掴んでいるのだ、敵も万全ではない。

「それに、ここにテレポする時『ドッコイショ』って言ってただろ」

「あ……(聞かれていた)」

「態勢を万全にするのも戦闘の内だ」

 このままテレポしても、向こうじゃ半分の力も出せない。

 水道局では「くそ、どこもかしこも一歩先をいかれてる!」とイラだっていた滝川だが、歴戦の勇士は修正も早い。

 

「車は使わないの?」

 

 住人の居なくなった町のいたるところに車が残っている、拝借しても文句は言われない。

「少しでもクールダウン……トモちゃんの内部温度75度もあるぜ」

「え?」

 確かに自分で確認すると75度、滝川のそれを計ってみると85度もあった。

「こういう回復の遅さが退役の一番の理由さ……」

 

 モーテルに戻ると、布団を被った子どもたちのベッドの上では、カッパドキアを明示したまま地球儀が回っている。

 二人は、それを視野の端に認めるだけでくずおれるように眠ってしまった。

 

「起きて! 二人が居ない!」

 床で眠ってしまっていた滝川は、友子の声に跳び起きた。

 ベッドの上では、相変わらず地球儀が回っていたが、布団の膨らみを残したままポチもハナも居なくなっていた。

「しまった、俺たちを追ってテレポしていたんだ!」

「服が残ったまま!?」

「未熟なテレポだから、体だけで行ってしまったんだ」

 

 子供二人の衣類と、バッグに入るだけの食料を詰めると、再びカッパドキアにテレポする二人であった。

 

☆彡 主な登場人物

  • 鈴木 友子        30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
  • 鈴木 一郎        友子の弟で父親
  • 鈴木 春奈        一郎の妻
  • 鈴木  栞        未来からやってきて友子の命を狙う友子の娘
  • 白井 紀香        2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
  • 大佛  聡        クラスの委員長
  • 王  梨香        クラスメート
  • 長峰 純子        クラスメート
  • 麻子           クラスメート
  • 妙子           クラスメート 演劇部
  • 水島 昭二        談話室の幽霊 水島結衣との二重人格 バニラエッセンズボーカル
  • 滝川 修         城南大の学生を名乗る退役義体兵士

 


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