せやさかい・354
文化祭の取り組みが遅れてる。
うちのクラスだけやなくって、学校全体が遅れてる。
なんでかっちゅうと、コロナですわ。
外国人旅行者への規制もほぼなくなってインバウンド(中身に凝ったバウンドケーキみたい(^O^))もコロナ前に回復し始めてんねんけども、相変わらずテレビとかでは『本日の感染者数』を発表してて、『第八波の流行が危ぶまれる!』とかワイドショーで煽ってるんで、先生やら理事やらPTAの一部なんかが二の足、三の足ですねんわ!
先生 理事 PTAの偉いさん……共通点は、みんな年寄り! 年寄りはテレビのワイドショーばっかり見てるからね。
それで二の足、三の足。
年度初めの行事予定では10月の15日、16日やったんやけど、ズルズル遅れて11月の23日、一日だけの開催。
中止の声も大きかったんやけど、三年生は入学以来一回も文化祭を経験してへん。
その三年生からの強い要望やら、OBからの声援やら、近隣の実施状況やらを鑑みて、やっと実施のみこみ。
せやけど、一年生は、ちょっと冷めてきてます。
クラスでも、ペコちゃんが取り組みのアンケートをとってHRを盛り上げようとしたんやけど、どうも盛り上がれへん。
アンケートでは、たこ焼き屋とかクレープ屋とかの模擬店が半分以上やったんやけど、いざ、話し合いをすると熱が無い。飲食店は、調理に関わる者は検便せならあかんというのが分かると、さらに熱が下がる。
「う~~ん、もう一つ議論が深まってこないわねえ……(^_^;)」
ペコちゃんは、この三月までは安泰中学で、うちらの担任やってたさかい、生徒の事がよう分かってる。
この状態で決めたら空中分解して悲惨な状況になるのん分かってるねんわ。
ペコちゃん、舞台で合唱するという腹案を持ってるらしいねんけど、担任が押し付けるようなことはしたくない。
それに、あんまり盛り上がれへんことは、口に出してこそ言わへんけど、ペコちゃんにもうちらにも予想はつきます。
三年ぶりの文化祭、やっぱり熱の高いもんやりたいです。
「ねえ、ちょっと様子を見に行こうよ」
留美ちゃんの提案で、昼休、職員室にメグリンも居れて三人でペコちゃんを訪ねることにしました。
「失礼しま……」
職員室に入って、ペコちゃんの席を見ると、聖真理愛学院の重鎮が一二年生の先生らに熱く語りかけてるのが目に飛び込んできた!
「我儘なことを言っているのは百も承知です。でも、このままでは文化祭の取り組みの大方は空中分解してしまいます。われわれ三年生には最初で最後の文化祭になります。どうか、取り組みが未定のクラスがありましたら、三年生有志学級と合同の取り組みにご協力ください!」
まるで、ラスボスの魔王を倒すのにギルドで仲間を募ってる女騎士長!
というか、その声はまさに今春一番人気アニメやった『異世界大戦』のヒロイン、シャルロッテ・ヒンデンブルグ。その前は『恋するマネキン』でヒロイン、マネキとネキンの声を一人でこなした声優生徒会長の百武真鈴こと田中真央!
声は、もともとスゴイとこへもってきて、120%の闘志がみなぎってて、これに賛同せえへんやつは、よっぽどの悪党か玉無しのヘタレという感じ。
「全体像を一分で示します、これをご覧ください」
生徒会書記の眼鏡っ子が、国会中継の野党議員みたいに大型のフリップを掲げた。
その声と手際の良さに、先生らのほとんどが視線を向け、わたしの肩には手が置かれた。
「え?」
振り返ると、我らが姫騎士、頼子先輩がガードのソフィーを引き連れて立ってる!
まるで、勇者を見送りにお城から出てきたお姫様みたいやったやおまへんか!
☆・・主な登場人物・・☆
- 酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校一年生
- 酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
- 酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
- 酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
- 酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
- 酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
- 酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
- 榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
- 夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
- ソフィー ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
- ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
- 月島さやか さくらの担任の先生
- 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
- 女王陛下 頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首