巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
168『スセリヒメの生姜湯』
「ここの神さまは古い友だちなのよ」
チマチマとミカンの皮をむきながらスセリヒメ。
「え、友だちだったんですか? って、ここの神さまは……」
やばい、巫女の助勤しながら神さまの名前も憶えてなかった(^_^;)
「いやだぁ、御祭神の名前も知らずに巫女やってたのぉ(¬д¬)!?」
「ド、度忘れよ(>〇<)」
「『なにごとの おわしますとは知らねども かたじけなさに なみだこぼるる~』かなあ」
「なにそれ?」
「西行法師がね、とある神社に立ち寄ったんだけど、なんの神さまか分からないけど、ありがたさに涙が出てきたって詠んだ和歌よ」
「え、あ、ああ、それですよ、それ!」
よう知らんけど西行と言えばえらい歌詠みの坊主。西行も同じなら、わたしもノープロブレム!
「ここの神さまはね秩父谷戸姫(チチブヤトヒメ)って言うの」
「あ、女神さまなんだ」
「え、女神さまってことも忘れてたぁ?」
「え、ああ……」
思い返すと、頼政さんの車を降りて拝殿の前で一礼して、巫女の練習で玉ぐしを捧げたりとかの練習はしたけど、御祭神については教えてもらってない?
シューージジジーーー
火鉢に掛けたヤカンが湯気を噴く。怒っているようにも笑っているようにも思えた。
「わたしの亭主知ってるでしょ……」
コポコポコポ……
ヤカンのお湯を湯呑に注ぐスセリヒメ。
「あ、オオクニヌシさん」
「うん。いちおう大国主の奥さんはわたしなんだけどね、大国主は、あちこち出かけては女に手を出してねぇ……まあ、あれでも出雲の大神だから、多少のことはね」
「ああ、福井とか新潟あたりまで出かけたんですよね」
「うん、でも、まさか埼玉まで足を延ばしていたとは……」
「え、知らなかったんですか?」
「いや、まあ、最後には分かったんだけどね。大国主はウソ下手だから……」
「そうなんだ」
「で、まあ、一度はヤマタノオロチの息子どもを連れて出張ったんだけど」
ボ!
かき回した火鉢の炭が小さな爆炎を上げた。
「でもね……じっさい会ってみたら、けっこういい娘でねえ。ヤマタの息子どもも『こんなに美しい谷川は見たことも無い』って言うしね。それで、気が付いたら友だちになっちゃった」
「え、そうなんだ」
「それに、グッチが写真館のバイトで来るようになってから調子も良くってさ」
「あ、文化祭じゃお世話になりましたぁ(^_^;)」
「そうよ、あの後、特に調子よくてさ。やっぱり神さまって言うのは、みんなが喜んでくれると力が出るわけですよ。ウエディングパラダイス、またやろうね!」
「え、ああ……」
ウエディングパラダイスは大成功だったけど、佐伯さんが自殺未遂をやっちゃって、このスセリヒメが大汗かいて黄泉平坂から連れ戻してくれたんだ。
「一時は植物人間とか言われてたんだけど、なんとか元に戻りそうなんだ」
「え、そうなんだ!」
「まあ、あれだけ噂になったから復学はしないだろうけど、新しい学校で頑張ってくれたらと思う」
「よかったあ」
「それでね、グッチたちがこっちに来るのを知って、ヤトヒメとも久しぶりだったし、ちょっとテンション上がっちゃったわけよ……ハイ、生姜湯。これ飲んで三が日がんばってね」
「わあ、ありがとう」
「他の子の分は置いておくから、お湯に溶かして飲ませてあげて」
「はい」
一口すすると、生姜の少し刺激のある甘さが口に広がり、スイッチが入ったみたいに体が温まる。
ウワァ~~~~~
その心地よさに思わず目をつぶってしまう。
再び目を開けるとスセリヒメの姿は消えていた。
☆彡 主な登場人物
時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ) 2年3組 クラスメート
辻本 たみ子 2年3組 副委員長 伯父:武藤頼政
高峰 秀夫 2年3組 委員長
吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
安倍晴天 陰陽師、安倍晴明の50代目
藤田 勲 2年学年主任
先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 世界史:吉村先生 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 藤野先生(大浜高校)
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
妖・魔物 アキラ
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
安藤さん 伊勢半のバイトでいっしょになったおばさん、お茶の先生
灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人
168『スセリヒメの生姜湯』
「ここの神さまは古い友だちなのよ」
チマチマとミカンの皮をむきながらスセリヒメ。
「え、友だちだったんですか? って、ここの神さまは……」
やばい、巫女の助勤しながら神さまの名前も憶えてなかった(^_^;)
「いやだぁ、御祭神の名前も知らずに巫女やってたのぉ(¬д¬)!?」
「ド、度忘れよ(>〇<)」
「『なにごとの おわしますとは知らねども かたじけなさに なみだこぼるる~』かなあ」
「なにそれ?」
「西行法師がね、とある神社に立ち寄ったんだけど、なんの神さまか分からないけど、ありがたさに涙が出てきたって詠んだ和歌よ」
「え、あ、ああ、それですよ、それ!」
よう知らんけど西行と言えばえらい歌詠みの坊主。西行も同じなら、わたしもノープロブレム!
「ここの神さまはね秩父谷戸姫(チチブヤトヒメ)って言うの」
「あ、女神さまなんだ」
「え、女神さまってことも忘れてたぁ?」
「え、ああ……」
思い返すと、頼政さんの車を降りて拝殿の前で一礼して、巫女の練習で玉ぐしを捧げたりとかの練習はしたけど、御祭神については教えてもらってない?
シューージジジーーー
火鉢に掛けたヤカンが湯気を噴く。怒っているようにも笑っているようにも思えた。
「わたしの亭主知ってるでしょ……」
コポコポコポ……
ヤカンのお湯を湯呑に注ぐスセリヒメ。
「あ、オオクニヌシさん」
「うん。いちおう大国主の奥さんはわたしなんだけどね、大国主は、あちこち出かけては女に手を出してねぇ……まあ、あれでも出雲の大神だから、多少のことはね」
「ああ、福井とか新潟あたりまで出かけたんですよね」
「うん、でも、まさか埼玉まで足を延ばしていたとは……」
「え、知らなかったんですか?」
「いや、まあ、最後には分かったんだけどね。大国主はウソ下手だから……」
「そうなんだ」
「で、まあ、一度はヤマタノオロチの息子どもを連れて出張ったんだけど」
ボ!
かき回した火鉢の炭が小さな爆炎を上げた。
「でもね……じっさい会ってみたら、けっこういい娘でねえ。ヤマタの息子どもも『こんなに美しい谷川は見たことも無い』って言うしね。それで、気が付いたら友だちになっちゃった」
「え、そうなんだ」
「それに、グッチが写真館のバイトで来るようになってから調子も良くってさ」
「あ、文化祭じゃお世話になりましたぁ(^_^;)」
「そうよ、あの後、特に調子よくてさ。やっぱり神さまって言うのは、みんなが喜んでくれると力が出るわけですよ。ウエディングパラダイス、またやろうね!」
「え、ああ……」
ウエディングパラダイスは大成功だったけど、佐伯さんが自殺未遂をやっちゃって、このスセリヒメが大汗かいて黄泉平坂から連れ戻してくれたんだ。
「一時は植物人間とか言われてたんだけど、なんとか元に戻りそうなんだ」
「え、そうなんだ!」
「まあ、あれだけ噂になったから復学はしないだろうけど、新しい学校で頑張ってくれたらと思う」
「よかったあ」
「それでね、グッチたちがこっちに来るのを知って、ヤトヒメとも久しぶりだったし、ちょっとテンション上がっちゃったわけよ……ハイ、生姜湯。これ飲んで三が日がんばってね」
「わあ、ありがとう」
「他の子の分は置いておくから、お湯に溶かして飲ませてあげて」
「はい」
一口すすると、生姜の少し刺激のある甘さが口に広がり、スイッチが入ったみたいに体が温まる。
ウワァ~~~~~
その心地よさに思わず目をつぶってしまう。
再び目を開けるとスセリヒメの姿は消えていた。
☆彡 主な登場人物
時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ) 2年3組 クラスメート
辻本 たみ子 2年3組 副委員長 伯父:武藤頼政
高峰 秀夫 2年3組 委員長
吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
安倍晴天 陰陽師、安倍晴明の50代目
藤田 勲 2年学年主任
先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 世界史:吉村先生 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 藤野先生(大浜高校)
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
妖・魔物 アキラ
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
安藤さん 伊勢半のバイトでいっしょになったおばさん、お茶の先生
灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人