巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
167『昭和の巫女はきつい』
ジョキンと聞いて、あの忌まわしいコロナを思い出すのは令和のJKだ。
中学の時は学校がまるまる半年も休みだったし、除菌、殺菌、消毒とかうるさく言われたよ。
でもね、昭和47年のジョキンは助勤のことなんだ。
巫女バイトが決まった時にお祖母ちゃんに言ったら、こんな話をした。
「ああ、助勤と言えば新選組だねえ」
想像の斜め上を行く感想なんで、こっちがビックリしてしまう。
「なに、ナントカ太郎とかがやってる政党?」
「ちがうちがう、近藤勇の新選組。局長の次に偉いのが助勤て言って、沖田総司が一番隊の助勤をやってたんだよ。新選組じゃ一番若いのにさ、永倉新八とかのオッサンと並んで立派にやっていたんだよぉ」
「え、お祖母ちゃん、新選組の時代から魔法少女やってたの(ㅎ.ㅎ)?」
「ん、んなわけないだろ(''◇'')!」
「だよね、今度巫女のバイトやるんだけど、正確には助勤て言うんだよ」
「え、そうなの? 昔は巫女は巫女だったんだけどねえ」
ウプ!
そんな数日前のスカタンを思い出して、お茶を噴き出しそうになる。
「だいじょうぶですかぁ?」
同じ休憩組のロコがコタツに潜ったままおざなりな返事。ロコの隣で横になってる真知子は返事もしない。
「ううん、ちょっとむせかえっただけ」
慣れない助勤の仕事と寒さでグロッキー、そっとしといてあげよう。この律義者は話しかけられたら必ず返事を返してくる。休憩時間はそっとしておいてやるに限る。真知子はほんとに寝てるみたいだし。
ロコほどじゃないけど、たしかに、この助勤の仕事はきつい。
とにかく寒い。
巫女服、いや巫女装束ってのは白衣に緋袴。むろん下にはババシャツに厚手のタイツ、足袋は重ね履き。ほんとは使い捨てカイロを背中とかに貼りまくりたかったけど、使い捨てカイロは、もう5年しないと発明されない。
授与所には電気カーペット、後ろにはストーブ焚いてもらってるんだけど、なんせ初詣。
授与所の窓は開けっ放し。宮司の頼政さんが工夫してくれて、工事用のライトを四つ吊るしてくれてる。ケンタとかマックとか、商品が冷めないようにライトあててるでしょ。授与所のためだけに発電機も回してもらってるんだけど、それでも寒い。
それにね、授与所と言えばお御籤なんだけど、令和みたく自動販売機じゃない。
お客さん、いや参拝客の人が「お御籤お願いします」と言ったら、巫女がお御籤をひくんだよ。ほら、でっかい木製のシェーカみたいなの。あれをガシャガシャやって「○○番です」と参拝客に示してから、100の小引き出しからお御籤を出して渡す仕掛け。
自分で引けよって思うんだけど、これがA町のしきたり。自分で引いたらありがたみがないんだとか。
JC巫女たちは、ほとんど、このお御籤要員と言っても過言じゃない。参拝客も巫女の正体が、近所のA子ちゃんとかY子ちゃんだとか分かってるんだけど、巫女の姿をしていたら神さまのお使いになるわけですよ。
とにかく元気だしね。
令和じゃ、映画や芝居の子役だって午後9時以降は働かせちゃいけないことになってる。
21世紀になったらどうするんだろうね、と余計な心配をしてしまう。
わたしも、まあ、なんとか務まってる。たぶん、直美さんとこのバイトと、年末のバイトで慣れてるんだ。
たみ子は、拝殿で高峰君といっしょに頼政さんのお手伝い。ガラス窓の外では、そういう新年早々の神社の営みが静かに進行している……夕べ扉が開いて神さまみたいなのが光になって現れて、あの時のどよめきが嘘みたいに静か……静かすぎる……と思ったら、二重のガラス窓だった。
ガラスに、コタツにも入らずの巫女姿が映っている。
え?
「やぁ、わたしも昨日から来てるの」
場所がら、全然違和感はないんだけど、この場に居るはずのない、御神楽采女さん。
巫女服姿だけども、この人は宮之森と大浜限定の巫女さん。
「アハハ、いちおうは神さまなんだよ(^_^;)」
そうだ、この人の本性はスセリヒメ。
だけど、なんで埼玉に?
☆彡 主な登場人物
時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ) 2年3組 クラスメート
辻本 たみ子 2年3組 副委員長 伯父:武藤頼政
高峰 秀夫 2年3組 委員長
吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
安倍晴天 陰陽師、安倍晴明の50代目
藤田 勲 2年学年主任
先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 世界史:吉村先生 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 藤野先生(大浜高校)
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
妖・魔物 アキラ
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
安藤さん 伊勢半のバイトでいっしょになったおばさん、お茶の先生
灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人
167『昭和の巫女はきつい』
ジョキンと聞いて、あの忌まわしいコロナを思い出すのは令和のJKだ。
中学の時は学校がまるまる半年も休みだったし、除菌、殺菌、消毒とかうるさく言われたよ。
でもね、昭和47年のジョキンは助勤のことなんだ。
巫女バイトが決まった時にお祖母ちゃんに言ったら、こんな話をした。
「ああ、助勤と言えば新選組だねえ」
想像の斜め上を行く感想なんで、こっちがビックリしてしまう。
「なに、ナントカ太郎とかがやってる政党?」
「ちがうちがう、近藤勇の新選組。局長の次に偉いのが助勤て言って、沖田総司が一番隊の助勤をやってたんだよ。新選組じゃ一番若いのにさ、永倉新八とかのオッサンと並んで立派にやっていたんだよぉ」
「え、お祖母ちゃん、新選組の時代から魔法少女やってたの(ㅎ.ㅎ)?」
「ん、んなわけないだろ(''◇'')!」
「だよね、今度巫女のバイトやるんだけど、正確には助勤て言うんだよ」
「え、そうなの? 昔は巫女は巫女だったんだけどねえ」
ウプ!
そんな数日前のスカタンを思い出して、お茶を噴き出しそうになる。
「だいじょうぶですかぁ?」
同じ休憩組のロコがコタツに潜ったままおざなりな返事。ロコの隣で横になってる真知子は返事もしない。
「ううん、ちょっとむせかえっただけ」
慣れない助勤の仕事と寒さでグロッキー、そっとしといてあげよう。この律義者は話しかけられたら必ず返事を返してくる。休憩時間はそっとしておいてやるに限る。真知子はほんとに寝てるみたいだし。
ロコほどじゃないけど、たしかに、この助勤の仕事はきつい。
とにかく寒い。
巫女服、いや巫女装束ってのは白衣に緋袴。むろん下にはババシャツに厚手のタイツ、足袋は重ね履き。ほんとは使い捨てカイロを背中とかに貼りまくりたかったけど、使い捨てカイロは、もう5年しないと発明されない。
授与所には電気カーペット、後ろにはストーブ焚いてもらってるんだけど、なんせ初詣。
授与所の窓は開けっ放し。宮司の頼政さんが工夫してくれて、工事用のライトを四つ吊るしてくれてる。ケンタとかマックとか、商品が冷めないようにライトあててるでしょ。授与所のためだけに発電機も回してもらってるんだけど、それでも寒い。
それにね、授与所と言えばお御籤なんだけど、令和みたく自動販売機じゃない。
お客さん、いや参拝客の人が「お御籤お願いします」と言ったら、巫女がお御籤をひくんだよ。ほら、でっかい木製のシェーカみたいなの。あれをガシャガシャやって「○○番です」と参拝客に示してから、100の小引き出しからお御籤を出して渡す仕掛け。
自分で引けよって思うんだけど、これがA町のしきたり。自分で引いたらありがたみがないんだとか。
JC巫女たちは、ほとんど、このお御籤要員と言っても過言じゃない。参拝客も巫女の正体が、近所のA子ちゃんとかY子ちゃんだとか分かってるんだけど、巫女の姿をしていたら神さまのお使いになるわけですよ。
とにかく元気だしね。
令和じゃ、映画や芝居の子役だって午後9時以降は働かせちゃいけないことになってる。
21世紀になったらどうするんだろうね、と余計な心配をしてしまう。
わたしも、まあ、なんとか務まってる。たぶん、直美さんとこのバイトと、年末のバイトで慣れてるんだ。
たみ子は、拝殿で高峰君といっしょに頼政さんのお手伝い。ガラス窓の外では、そういう新年早々の神社の営みが静かに進行している……夕べ扉が開いて神さまみたいなのが光になって現れて、あの時のどよめきが嘘みたいに静か……静かすぎる……と思ったら、二重のガラス窓だった。
ガラスに、コタツにも入らずの巫女姿が映っている。
え?
「やぁ、わたしも昨日から来てるの」
場所がら、全然違和感はないんだけど、この場に居るはずのない、御神楽采女さん。
巫女服姿だけども、この人は宮之森と大浜限定の巫女さん。
「アハハ、いちおうは神さまなんだよ(^_^;)」
そうだ、この人の本性はスセリヒメ。
だけど、なんで埼玉に?
☆彡 主な登場人物
時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
滝川 志忠屋のマスター
ペコさん 志忠屋のバイト
猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ) 2年3組 クラスメート
辻本 たみ子 2年3組 副委員長 伯父:武藤頼政
高峰 秀夫 2年3組 委員長
吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
安倍晴天 陰陽師、安倍晴明の50代目
藤田 勲 2年学年主任
先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 世界史:吉村先生 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 藤野先生(大浜高校)
須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
妖・魔物 アキラ
その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
安藤さん 伊勢半のバイトでいっしょになったおばさん、お茶の先生
灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人