宇宙戦艦三笠
「両舷10時と2時の方向に敵艦体!」「距離4パーセク!」
Jアラートみたいな警報とともに当直のクレアとウレシコワが叫んだ。
「両舷共に10万隻、クルーザーとコルベットの混成艦隊、あと1パーセクで射程に入ります」
「敵艦隊、共にエネルギー充填中の模様。モニターに出します」
クレアとウレシコワが的確に分析し、報告を上げてくる。モニターには、敵艦一隻ずつのエネルギー充填の様子がグラフに表され、まるで、シャワーのようなスピードでスクロールされている。
「全艦の充填には3分ほどだな。両舷前方にバリアー展開!」
俺が命じたときに、砲術長の天音が遅れて駆け込んできた。
「ごめん! ミカさんバリアーお願い!」
天音は、濡れた髪のまま、いきなり船霊のミカさんに頼んだ。
「天音、冷静に。ボタンぐらい留めてからきなさいよ(#`_´#)!」
樟葉に怒られる。
天音は、ざっと体を拭いたあとにいきなり戦闘服を着て、第一第二ボタンが外れたままだった。俺とトシの視線が自然に天音の胸元に向く。さすがに、0・2秒で、天音はボタンを留めた。
が、その0・2秒が命とりになった!
「敵、全艦光子砲発射。着弾まで15秒!」
「ミカさん、バリアー!」
「大丈夫、間に合うわ」
ミカさんは冷静に言った。
「カウンター砲撃セット!」
カウンター砲撃とは、三笠の隠し技で、敵の攻撃エネルギーを瞬時に三笠のエネルギー変換し、着弾と同時に、そのエネルギーの衝撃を和らげて、攻撃力に変えるという優れ技である。カタログスペック通りにいけば、三笠は無事で、敵は鏡に反射した光を受けるように、自分の攻撃のお返しを受けるはずだった。
「着弾まで2秒。対衝撃閃光防御!」
クルーは、ゴーグルを下ろし、身を縮め持ち場の機器に掴まった。
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオン!
ウワアアアアアアアア!!
震度7ぐらいの衝撃がきた!
天音が急場に留めたボタンが、みんな弾け飛んだ。瞬間胸が露わになった天音だったが、余裕ぶって見ている余裕はなかった。
三笠はシールドで受け止めたエネルギーの大半を攻撃力に変換。カウンター砲撃を行った。主砲、舷側砲から、毎秒100発の斉射で光子砲が放たれた。
しかし、両舷で100万発を超える敵弾のエネルギーは変換しきれず。舷側をつたって、シールドの無い艦の後方に着弾し、いくらかの被害が出てしまった。
「敵、6万隻を撃破。シールドを張りながら撤退していきます」
「各部、被害報告!」
「推進機、機関共に異常無し!」
「主砲、舷側砲異常なし!」
「右舷ガンルームに被弾。隔壁閉鎖」
「……後部水タンクに被弾。残水10」
「天音、シャワー済ましといてよかったね。飲料用に一週間もつかどうかだよ……」
樟葉が優しくフォローするが、責任感と癇癪の強い天音は唇を噛んでいる。
「ここらへんで、水を補給できる星はないかしら?」
ウレシコワが、真っ直ぐにレイマ姫に声を掛けた。
「右舷の2パーセクさアクアリンドがあるじゃ……」
「「「「アクアリンド……」」」」
「んだ……覚悟が必要じゃ」
アクアリンドは、表面の90%が水という星であったが、グリンヘルドもシュトルハーヘンも手を付けないだけの理由があったのだ……。
☆ 主な登場人物
修一 横須賀国際高校二年 艦長
樟葉 横須賀国際高校二年 航海長
天音 横須賀国際高校二年 砲術長
トシ 横須賀国際高校一年 機関長
ミカさん(神さま) 戦艦三笠の船霊
クレア ボイジャーのスピリット
ウレシコワ ブァリヤーグの船霊
メイドさんたち シロメ クロメ チャメ ミケメ