せやさかい・118
ウウーーカンカンカン ウウーーカンカンカン ウウーーカンカンカン
サイレンと鐘の音で目が覚めた。消防自動車や!
日ごろはサイレンの音は区別はつきにくい。救急車かパトカーか消防車か。たいてい遠くやから『あ、サイレンや』としか分かれへん。たとえ目の前を通っても自分に関係なかったら直ぐに忘れるし。
せやけど、ほん家の近所となると、はっきり聞き分けるというか、気になる。
『近所だよ』
詩(ことは)ちゃんの声も聞こえて来たんで、半纏を羽織って廊下に出る。
「二丁目みたいやなあ」
おじさんの声が階下でする。続いて家のもんの気配、カカッとかザッとか履物を履く音、玄関が開けられる。とたんにサイレンの音が大きくなる。
「行ってみよ……」
詩ちゃんに促されて、うちらも境内に。
山門の向こう……たぶん、通り二つ向こうから夜目にもはっきりと立ち上る煙が見える。
直ぐに消防車の放水が始まったみたいで、何かが水圧で飛ばされる気配、ボボボと燃え広がるような消されていくような、どっちともつかん音。
山門の前を近所の人が通っていく。
「諦一、脚立持ってきて屋根登れ。諦念は外から見回れ」
お祖父ちゃんが指示して、テイ兄ちゃんとおっちゃんが動く。緊急事態はお祖父ちゃんの指示が頼もしい。
ボ!
なにかの拍子で、ひときわ大きな炎が立ち上って、火の粉が舞い上がる。
「美保さん、ホース延ばしといて、詩は消火器を」
「うん、お祖父ちゃん」
家族みんながテキパキ動く。あたしはノコノコ出てきたダミアを抱き上げてオロオロするばっかり。
「念のためや、念のため」
お祖父ちゃんは、安心させるように微笑みで返してくれる。
やっぱり年の功やと思う。
炎は、さっきの『ボ!』が最高で、ちょっとずつ下火になっていく。
「詩、消火器!」
築地の外でおっちゃんの声。
「さくらちゃんも、一本」
「う、うん」
詩ちゃんと二人で山門をくぐって急行!
うちのお寺と違て、道を挟んだ家の駐車スペースから煙。屋根が無いので、落ちてきた火の粉が隅に積んだった段ボール箱なんかに燃え移って煙を上げてる。
「早よかせ!」
おっちゃんは受け取ると、ブシューーーーっと、もたつきながらも消火器で火を消した。
消し終わって、その家の呼び鈴を鳴らすけど反応がない。家の中に灯りも点いてないから、誰も居てへんみたい。
しばらくすると、防火服から水を滴らせた消防士さんが二人着て、状況を確認し始める。
どうやら危ないとこやった。
鎮火の宣言がされて、お寺に戻る。
「さくら! 大丈夫やったあ!」
なんと、頼子さんが駆けつけてくれてた。
よかったよかったとハグしてくれる。
持つべきものは先輩や!
ニャー……と鳴いたダミアの声が震えてるのに気付く。
ノコノコ出て来たなんてごめんな、ダミアも怖かってんなあ。