REオフステージ (惣堀高校演劇部)
088・ジャングルジムのてっぺん
ペダルが軽い。
パンクの修理だけやなくて、あちこち油をさしてくれたようや。
やっぱり、基本的にミッキーはええやつなんや。
あ、以下の会話はミッキー相手なんで英語で喋ってる、念のため。
「どうもありがとう、すごく快調になった!」
「いや、ついでだよ、ついで。ヨイショ」
そう言うとミッキーはジャングルジムに上っていく。
「どうもありがとう、すごく快調になった!」
「いや、ついでだよ、ついで。ヨイショ」
そう言うとミッキーはジャングルジムに上っていく。
つけあがらせることなく寄り添いながら話そうと思ってたら、さっさと公園で一番高いところに上っていく。しゃあないから、あたしも着いて上っていく。
女の子にもよるけど、ジャングルジムのテッペンなんてところで男の子と並んだら少しドキドキする。
二階ほどの高さもないんやけど、お尻の下がスケルトンやさかいにムズムズドキドキ。
この状況で恋を語られたら、自分の胸の高鳴りを誤解してしまいそう。
もっとも、ミッキーはそんな『吊り橋効果』的なことを企んで上ったわけではないやろ。
単にこういう場所が好きなだけなんやろ。サンフランシスコで美晴に迫ったんも金門橋を見下ろす丘の上やったて、美晴言うてたし。
もっとも、ミッキーはそんな『吊り橋効果』的なことを企んで上ったわけではないやろ。
単にこういう場所が好きなだけなんやろ。サンフランシスコで美晴に迫ったんも金門橋を見下ろす丘の上やったて、美晴言うてたし。
自転車の修理といいジャングルジムといい、ハックルベリーのようなところがあるみたい。
ハックルベリーには直球がええ。
「ミッキー、美晴のこと誤解してんのよ」
「なにを(◎▭◎)!?」
直球過ぎて目を剥いてきよる。
「I can cook pretty って言ったのよね」
「そうだよ。グループで自己紹介しあってるときに、美晴のことをみんながprettyだとかcuteだとか騒いでる時に、彼女言ったんだ」
「though I can only cook……pretty でしょ」
「うん『お料理が上手いだけ……けっこうね』だよ。日本人て変な謙遜ばっかりするけど、あの言い回しは上手いと思ったよ、控えめに自分の長所をアピールしてるしね」
「美晴はハンパに英語出来るから、とっさに言い間違えたのよ」
「言い間違い?」
「ほんとは、こう言いたかったのよ。though I can only cook……little. ユーアンダスタン?」
「……though I can only cook……little?」
「そ、prettyって単語が出たんで、うまいこと返そうと思って、とっさに間違えたのよね。でも、みんなが感心してくれるし、旅先だし『ま、いっか』にしちゃったわけ。まさか、あんたが日本に来て自分の家にホームステイするなんて思いもしないもんね」
「……そっか」
「だから、あの料理は、あたしのレクチャーと演劇部のアシストでやったってわけなのよ」
ここまで言うと、ミッキーは黙り込んだ。
やっぱ直球はまずかった……フォローしようと思ったら、いきなりジャングルジムを飛び降りた。
スタ!
体操選手みたいに着地すると、クルッと振り返った。
「かわいいじゃないか! なんだかアニメの萌えキャラだ! ちょっとツンデレだけど! ツンデレ好きだ!」
いや、ツンはあるけど、デレは無いから……。
こいつを野放しにしたらアカン! そう思って、わたしも飛び降りた!
体操選手みたいに着地すると、クルッと振り返った。
「かわいいじゃないか! なんだかアニメの萌えキャラだ! ちょっとツンデレだけど! ツンデレ好きだ!」
いや、ツンはあるけど、デレは無いから……。
こいつを野放しにしたらアカン! そう思って、わたしも飛び降りた!
スタ!
「ミッキー、あんた演劇部に入んなさい!」
「ミッキー、あんた演劇部に入んなさい!」
「演劇部?」
「そう、そして……」
「ミリー、ちょっと目が怖いよ……」
「い、いま、足を……く、くじいたの(>_<;)……家まで送ってちょーーー」
ちょーー痛いいいいいいいいいいいいっ!!
ちょーー痛いいいいいいいいいいいいっ!!
☆彡 主な登場人物とあれこれ
- 小山内啓介 演劇部部長
- 沢村千歳 車いすの一年生 留美という姉がいる
- ミリー 交換留学生 渡辺家に下宿
- 松井須磨 停学6年目の留年生
- 瀬戸内美春 生徒会副会長
- ミッキー・ドナルド サンフランシスコの高校生
- シンディ― サンフランシスコの高校生
- 生徒たち セーヤン(情報部) トラヤン 生徒会長 谷口
- 先生たち 姫ちゃん 八重桜(敷島) 松平(生徒会顧問) 朝倉(須磨の元同級生)
- 惣堀商店街 ハイス薬局(ハゲの店主と女房のエリヨ) ケメコ(そうほり屋の娘)