RE・かの世界この世界
再会を果たし、積もる話は山ほどあるんだけど、取りあえずはイザナギ・イザナミを見守らなくちゃならない。
海に潜ったヒルコとアハシマにも気持ちは残ったけど、三羽のカモメのように並んでオノコロジマに戻った。
「すごい大木!」
ケイトが目を丸くする。
確かにカテンの森(152『カテンの森』)の巨木たちが苗木に見えるほどに巨大だ。
わたしもヒルデも驚いたが、ケイトほどではなかった。ヒルデは世界樹のユグドラシルを知っているし、わたしも冴子ほどではないけど日本の神話を知っている。
「ほんとうは、アメノミハシラという柱だよ」
沖に出て戦っているうちにアメノミハシラの周囲はさらに緑が深くなっていて、わたしたちは、ミハシラの下の方、程よく洞になっているところに身を隠した。
「あちこち芽吹いて大木のようになっているけどね、この世界の生命の根源なんだよ」
「この世界? えと……オーディンとかヴァルハラとかの世界じゃなくて」
「あちらからすると異世界だけど、わたしの世界の神話世界だと思う」
「テルの……というと日本の?」
「そうよ、どんな力が働いているのか分からないけど、ここからやり直せということなんだと思う」
「や、やり直し……」
「わたしはワクワクしているぞ。とりあえず、ここではラグナロク(最終戦争)は起こらずに済みそうだからな」
「ヒルデも、嫌だったの?」
「ロキ達を世界樹の女神に送った後は、真っ直ぐ父の主城ヴァルハラだ。そこで父は命ずる『ラグナロクの準備をしろ』とな……」
ヒルデは言いよどんでしまう。
ケイトも、あそこまで付き合った旅だから、十分聞く資格はあると思う。
でも、いまは触れるべきじゃないとも思う。ケイトは日本神話についての知識は無いみたいだから一度に言っても分からないだろうしね。
それにね……
「予感がするのよ」
ちょっと眉根にしわを寄せて返した。
「あ、今の表情可愛いぞ」
「よ、よしてよヒルデ(^_^;)」
冷やかされて思い出した、冴子に「それは反則だ」と言われたわたしの癖だ。
話がマジになり過ぎたり、話をここまでにしておきたいときに出てくる子供のころからの癖。
微妙な卑しさがある。
話を打ち止めにするだけじゃなくて、半ば無意識に自分の可愛さをアピールしてしまう。
「ここはさ、たぶん日本神話の世界。それも一番最初の国生み神話のころだと思うのよ」
「ラグナロクにはならないの?」
「無いと思う。日本神話はキチンと習ったことが無いけど、そう言うのは無かった……はず」
「えと……だったら、観てればいいだけ? 人のゲーム動画みたくにさ!?」
「それはどうかな。ここに来て、いくらも経っておらんが、もう二回も戦っているぞ。一度は、ついさっきだ、テルもいっしょに戦っただろうが」
「あ、そうなんだ」
「今回はスマホが使えるんで一応の流れは分かるんだけど、どこでどの程度干渉することになるか分からない」
「まあ、気楽に行こうではないか。ケイトも戻ってきたし、このまま進んで行けば、他のメンバーも戻って来るような気がするぞ」
「そうね、取りあえず、あの二人を見守らなくっちゃ……」
「テル」
「なに?」
「なんか優しくなってない、言葉が女の子っぽい」
「え、あ……そうかなあ」
「よいではないか、わたしもオーディンの呪いがぶり返した時は幼児化してしまうからな」
「アハハ、そうだったね」
わたしも笑っておいたけど、ケイトには元々の記憶は蘇っていない感じだ。
今は、まだこれでいいんだろう。
ゴソゴソゴソ
三人並んで、斥候のような気分になって草をかき分ける。
男女神は生まれたままの姿で、背を向けて、それぞれの方向にミハシラを周っている。
二人とも、さっきの失敗を取り戻す意気込みと、互いへの興味で、この高さから見てもハッキリわかるくらいに赤くなって、再びの出会いに期待を膨らませている感じ。
「膨らんでいるのは期待だけかぁ?」
「なんか、いやらしいっすよ、ヒルデ」
「なにがイヤラシイ、わたしは胸の事を言ったんだ、期待に胸を膨らませって言うであろうが」
「あ、なんかごまかした」
「い、いやらしいって言う方がいやらしいんだぞ」
「なんか息、荒くないっすか?」
「そ、そんなことは無いぞ、そういうケイトの方が赤いぞ」
「ち、違うっす(#'0'#)」
「二人とも静かに」
「テルは落ち着いてるっすね」
「こいつは、ムッツリなだけなんだろ(#'∀'#)」
「う、うるさい、ほら、二人がまた出会うわよ!」
イザナギ・イザナミの二神はミハシラを巡って、二度目の出会いを果たそうというところだった……ミハシラは東京ドームほどの太さになっていた。
☆ ステータス
HP:10000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・0 マップ:14 金の針:0 福袋 所持金:450000ギル(リボ払い残高0ギル)
装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
白魔法: ケアル ケイト(ケアルラ) 空蝉の術
オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト) 思念爆弾
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
ペギー 異世界の万屋
ユーリア ヘルム島の少女
ナフタリン ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り
その他 フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長